「自分の性の在り方を自覚しているけれど他人には開示していない状態」を指す「クローゼット」ということばを知っていますか?
「虹クロ」は、そんな10代の若者がクローゼット(タンス)のキャラクターになって、心の奥にしまってあった気持ちを打ち明ける番組。さまざまな分野で活躍するメンター(助言者)たちが、自身の体験談を交えて10代の思いに寄り添います。
2021年11月にスタートして4回目の放送となる今回はどんな本音トークが展開されるのでしょうか?
制作を担当している島津理人ディレクターのコメントや、メンターの井手上 漠さん、ロバート キャンベルさんのメッセージとともに、番組の見どころをお届けします。
同性とステディーな関係を築くにはどうしたらいい?
「自分かバイセクシャルかゲイか分からない」「男でも女でもない自分は成人式で何を着たらいい?」など、番組で展開されるトークテーマはさまざま。今回は「同性とステディーな関係を築きたい」という19歳の大学生・ヒロキさんがクローゼットのキャラクターとしてスタジオに登場します。
一時の感情ですぐに体の関係を持つのではなく精神的なつながりを深めていける相手と出会いたいと話すヒロキさん。しかし、過去の恋愛がトラウマとなってなかなか新しい恋に踏み出せないと言います。
そんな彼の話に耳を傾けるのは、メンターの井手上 漠さん(モデル)、ロバート キャンベルさん(日本文学者)、下山田志帆さん(サッカー選手)、Uさん(エルビアンTV/YouTuber・不動産仲介業)の4人。性の在り方も活躍する分野も異なる4人の口からどんなことばが飛び出すのでしょうか。

島津Dの制作メモ
10代が匿名で悩みを書き込める「ハナシティ」というNHKのポータルサイトがあるのですが、そこにセクシャリティーに関する悩みが多く寄せられていました。ゲイの友達からも、10代のころは周りの人に相談できなかったという話を聞いて、そういう思いを抱えている若い人たちに寄り添う番組を作りたいと考えていました。
そのころ、5人のゲイがそれぞれの才能を生かして相談者のメークオーバー(劇的な変化)を手助けする海外のリアリティーショーをよく見ていたんです。5人が相談者それぞれの思いに寄り添いながらポジティブに背中を押す姿を見ていると、セクシャリティーの違いなんて関係なくすばらしいなと感じて。
そこからヒントを得てこの番組を立ち上げました。
メンターの皆さんはご自身のセクシャリティーを公表していますが、“LGBTQ+”であることをオープンにしていない人もたくさんいます。特に10代は、誰かに話したくても話せる相手がいなくてモヤモヤしているという人が少なくありません。自分と似たような体験をしている人と話したり、体験談を聞いたりしてみたいという声が多かったので、さまざまなバックグラウンドを持つ著名人にメンターとしてご参加いただきました。
海外で子育てをする“夫夫”&ryuchellが語る「結婚」「家族の形」とは
今回は、4人のメンターに加えて、スウェーデンで結婚して子育てをしている日本人とスウェーデン人の同性カップルがリモート出演。出会った当初はカジュアルな関係だったというお二人ですが、その後どのようにステディーな関係を築き結婚に至ったのでしょうか? 結婚によってもたらされた変化などについても話題が広がります。

またスタジオには、昨年「新しい形の家族」になることを公表したryuchellさんが登場。自身が抱えてきたセクシャリティーの悩みや、公表に至った経緯、家族との関係性がどう変わったのかなど、胸の内を赤裸々に語ります。

島津Dの制作メモ
基本的に、番組ホームページでメンターの皆さんに話をしたい10代の方を募集しているので、こちらから話すテーマを設定することはしていません。
ただ今回は、ryuchellさんの発表が賛否を呼んだことがずっと気になっていて。結婚や家族にまつわる話題にも触れられたらと思ったので、みっつんさんとリカさん夫夫、ryuchellさんにご出演いただきました。
毎回テーマに合わせて演出を変えていますが、重い雰囲気にならないようにというスタンスは初回から変わっていません。スタジオのセットを明るい色合いで統一したり、パパラピーズのじんじんさんが「多様な性」についての世界の取り組みやトピックをポップに紹介するコーナーを取り入れたりしながら、ポジティブな雰囲気で見てもらえるよう意識しています。

日本ではまだまだ“LGBTQ+”だからとカテゴライズしたり、こうした話題をネガティブにとらえたりしがちな印象がありますが、もっとファッションやエンタメと同じように気軽に話せる環境になればいいなと思うんですよね。
過去の放送後、意外にも20代や30代の女性から好評をいただいた一方、「当事者じゃないから関係ない」「周りにはいないから分からない」というご意見もありました。果たして本当にそうなのでしょうか?
見えていないだけで、実際には、自分の性をクローゼットにしている人が身近にいるかもしれません。
番組を通して、そのことを当事者以外の方にも広く知っていただき、性に揺らぐ人々にとってより生きやすくなるような手助けになれば幸いです。
メンターの2人からメッセージが届きました
虹クロ「同性とステディーな関係を築きたい」
【放送予定】1月28日(土)[Eテレ]後9:00~9:50