チャーチルをゲイリー・オールドマンが熱演!

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

3月23日(木)[BSプレミアム]後1:00〜3:06

今回ご紹介するのは現代最高の俳優の一人、ゲイリー・オールドマンがイギリス首相チャーチルを演じ、アカデミー主演男優賞に輝いた作品です。

第2次世界大戦下の1940年、ナチス・ドイツはフランスを侵略。イギリスにも脅威が迫っていました。困難な状況のなかで首相となったのがウィンストン・チャーチル。イギリスをどう導き、どんな決断を下すのか。就任からフランス・ダンケルクでの歴史的撤退までを綿密なリサーチをもとに描きます。

オールドマンは1年以上をかけて文献や映像などをもとにチャーチルの立ち居振る舞いや考え方、声や表情を徹底的に研究し、“まねる”のではなくオールドマンならではの表現で熱演。アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を受賞しました。

1958年ロンドン生まれのオールドマン。オリバー・ストーン監督の「JFK」(1991)では、ケネディ大統領暗殺犯とされるリー・ハーヴェイ・オズワルド、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ」(1992)では吸血鬼、「ハリー・ポッター」シリーズではシリウス・ブラック、「裏切りのサーカス」(2011)では冷静沈着な初老のスパイ、「Mank/マンク」(2020)では映画史上の傑作「市民ケーン」(1941)の脚本家と、実在の人物から怪物、悪役・ヒーローまで、どんなキャラクターも全身全霊で演じ切り、ブラッド・ピットやトム・ハーディをはじめ、俳優からも深く尊敬されています。
そんなオールドマンが一躍注目されたのは伝説のロックバンド、セックス・ピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャスを演じた「シド・アンド・ナンシー」(1986)。革ジャンに逆立った髪型、あらゆる権威に反抗し、21歳で亡くなった実在のパンクロッカーを迫真の演技で演じています。その30年後に、まるで正反対と思える政治家を演じてしまうのですから“カメレオン”俳優とよばれるのも納得です。

細身のオールドマンは、たっぷりしたチャーチルとは全く違う体型ですが、見事に変身させたのが特殊メーク。担当したカズ・ヒロ(辻 一弘)は当時、映画界から離れていたものの、オールドマンのたっての希望でメークを担当。デビッド・マリノウスキ、ルーシー・シビックとともにアカデミー賞メーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞しました。

チャーチルの妻を演じるクリスティン・スコット・トーマスはじめ、共演者も実力派俳優ぞろい。ジョー・ライト監督の重厚な演出も魅力的です。

見ごたえたっぷりの歴史ドラマ。どうぞお楽しみください!

プレミアムシネマ「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

3月23日(木)[BSプレミアム]後1:00〜3:06


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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