民俗学者マイケル・ディラン・フォスターが日本各地の妖怪伝説を訪ねる旅

YOKAI「姫魚」「座敷わらし」

6月24日(土)[BS1]
午後9:00~9:28「姫魚 疫病を予⾔!? 現代によみがえる妖怪」
午後9:30~9:58「座敷わらし 幸せをもたらす妖怪の謎」

NHKの国際放送「NHKワールドJAPAN」の人気番組「YOKAI」が日本語版となってBS1に!

日本では、この世で起きる不思議なできごとは“妖怪”の仕業に違いないと言い伝えられてきました。
妖怪というと、どこか不気味でおどろおどろしいイメージを抱くかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか? 彼らの声に耳を傾け、日本の魅力をさらに深堀りしてみようというのがこの番組。

アメリカの大学で日本の民俗学や、民間伝承などについて研究しているマイケル・ディラン・フォスター博士が日本各地を旅し、妖怪にまつわる伝承からその土地の歴史や文化をひも解いていきます。

今回は、江戸時代に疫病を予言したと伝えられている予言獣「姫魚ひめうお」と、家に住みつくと繁栄し、逆にいなくなると没落するという「座敷わらし」の回を2本立てでお届け。制作を担当した山本雄平ディレクターのコメントを交え、番組の見どころを紹介します!

江戸の世を騒然とさせた予言獣
「姫魚」の謎を追って長崎へ

「姫魚」を描いた絵。4メートルもの魚体に角の生えた女性の顔、尻尾には剣のようなものが付いている不思議な妖怪。(国立歴史民俗博物館蔵)

フォスター博士が最初に注目したのは、江戸時代に肥前国(現在の長崎県と佐賀県)・平戸の海に突然現れたといわれる予言獣「姫魚」です。

予言獣といえば、コロナ禍の現代で「アマビエ」が有名になりましたが、その先駆けともいわれているのが姫魚。疫病が発生することを予言し、その姿を描き写せば救われると告げました。姫魚のうわさは江戸にまで広がり、赤痢が大流行した江戸では人々はこぞって姫魚を描いた絵を家に貼ったといいます。

江戸時代、外国の玄関口となっていた長崎。

しかし、SNSもスマホもない江戸時代、姫魚の予言はどのようにして長崎から江戸まで流布したのでしょうか? そして、魚の姿で肥前の海に現れた理由は? その謎を解き明かすべく長崎を訪れたフォスター博士は、交易が盛んだった長崎の歴史や、江戸時代の流行の発信源だったあるツールが姫魚伝説を生む大きな要因になっていることに着目します。

姫魚に類似した予言獣がほかにも登場する。

幸福をもたらす守り神
「座敷わらし」の正体とは?

座敷わらしは、家の守り神として古くから大切に思われてきた。

子どもの姿で現れ、見た人に幸福をもたらすといわれている「座敷わらし」。その伝説は全国各地で伝えられ、土地によってさまざまな逸話が残されています。災いを事前に知らせたり、財宝を掘り当てたりして家の住人に福をもたらしてくれるのですが、座敷わらしが姿を現さなくなった家は衰退してしまうという怖い一面も……。そんな守り神のような妖怪は、どこで生まれ全国に広がっていったのでしょうか?

岩手県の金田一温泉郷にある座敷わらしが出ると言われている宿。その姿を一目見ようと、全国から多くの人がやってくる。

そのヒントが、柳田國男が岩手県・遠野に伝わるさまざまな民話・伝説を集めた本『遠野物語』にありました。
この本には、座敷わらしにまつわる逸話が記されており、遠野では今なおさまざまな物語が地元の人によって語り継がれています。

座敷わらしの正体を探ろうと遠野へ足を運んだフォスター博士は、民話を語り継ぐ地元の人々の思いに触れ、遠野地方の厳しい生活環境や文化的背景が座敷わらしの謎を解く鍵になるのではと考えます。

フォスター博士にとって、遠野は妖怪研究の原点とも言える場所だという。

山本D取材メモ

「妖怪」という日本ならではのコンテンツを通して、日本の歴史や文化の魅力を広く世界に発信したいという思いを込めて制作しました。妖怪というと遠い昔の世界の話だと感じられるかもしれませんが、取材をしてみると、実は現代を生きる私たちとも深く関わりがあることがわかりました。江戸時代に疫病がまん延したとき、姫魚という予言獣が人々の心のよりどころになったように、コロナ禍の現代でもアマビエのような予言獣が人々のお守り替わりになっている。それはすごく興味深いなと感じましたね。

ただ、姫魚にまつわる逸話はあまり残されていなくて、今ではほとんど知られていない妖怪なので、詳しい研究者から話を聞いたり、当時の資料をさがすなどの事前の下調べには時間がかかりました。古い文献に記された伝承を手がかりに、なぜ当時それが流行ったのかを想像しながら、フォスター博士の見立ても伺い、一つ一つのパーツをつなぎ合わせていく作業だったので、結構大変でした。

妖怪の世界観に引き込まれていく美しい映像にも注目!

座敷わらしについては、地域全体で伝承を残していく取り組みが行われていて、その土地に古くから伝わる民話を地元の方からじっくり聞くことができました。「民話の里」と呼ばれている遠野では、座敷わらしや河童にまつわる話が代々しっかり語り継がれてきたんだなという印象を強くうけましたね。

日本には、妖怪にまつわる話がたくさんありますが、それを語り継ぐ人は時代とともに少なくなってきています。番組で紹介することによって、少しでも後世に残せたらいいなと思いますし、妖怪を大事に思う日本人の心の豊かさを改めて感じていただけたらと思います。

「YOKAI」

【放送予定】
6月24日(土)[BS1]
午後9:00~9:28「姫魚 疫病を予⾔!? 現代によみがえる妖怪」
午後9:30~9:58「座敷わらし 幸せをもたらす妖怪の謎」

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