世界初の「紅海」深海調査に密着!

NHKスペシャル「ディープオーシャンⅡ 紅海 世界初!深海の魔境に挑む」

7月23日(日)[総合]午後9:00~9:49
再放送7月30日(日)[総合]午後3:40~6:00 ※高校野球のため各局にて変更あり

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放送から1週間は見逃し配信をします(NHKプラス)

世界で初めて深海でダイオウイカを撮影したNHK深海取材班が、新開発の8Kカメラで未知なるフロンティアへ挑みます!

舞台は中東の海・紅海。

世界一透明度が高い海には極彩色のサンゴ礁、そして、その下には未踏の深海世界が広がっているといいます。去年、サウジアラビア政府が世界初の紅海深海調査を実施。最新の有人潜水艇を駆使した5か月にも及ぶ大調査です。

研究者がもっとも注目するのは、不思議な海底湖「ブラインプール」。塩分濃度が高いため周囲の海水とは混ざることなく、まるで、海底にもう一つの水面があるかのような神秘的な光景が広がります。地球の内部から湧き出したブラインプールの水は酸素ゼロ。誤って入ると危険なゾーンです。しかし、そこは30億年前の原始の海に近い環境。もし生物が見つかれば、生命起源の解明につながる大発見になるといいます。果たして、ブラインプールの中に生命は存在するのでしょうか? 前代未聞の調査に挑む研究者たちに密着し、神秘の海底景観と深海大探検に迫っていきます。

放送に先駆け、制作者のコメントとともに、3つのポイントから番組の見どころをご紹介します。

紅海深海調査の3つのポイント

■深海に大絶壁の謎

研究者らを乗せた潜水艇でいざ深海へ。世界屈指の透明度を誇る紅海にはさまざまな生き物が暮らしています。水深350メートルまで潜ると、そこに現れたのは巨大で垂直な壁。一体なぜ大絶壁が深海に続いているのか、紅海の成り立ちをご紹介します。さらに、700メートルもの深さで出会った、生き物の営みにも注目です。

紅海の深海にそびえる断崖を調査する潜水艇

■神秘の絶景 深海に広がる森!?

紅海南部での海底探索中、潜水艇が水深250メートルを進んでいると、そこに現れたのは海底に立ち並ぶ無数の柱でした。煙突のような形から「チムニー」と呼ばれ、幻想的な景色が広がります。周辺の調査、またチムニーの調査で驚きの事実が明らかになります。

■海底の湖 ブラインプール

紅海の深海に生命の起源や進化を研究する研究者たちが注目する場所があるといいます。それが、ブラインプールです。

目指すのは海底のそのまた海底。無人潜水艇で目的の姿をとらえます。海底に広がっているのは、なんと水面!? 塩分濃度が海水の4倍ともいわれるブラインプールの特性などとともに、DNAから生命の起源に迫れるかもしれないという、前代未聞の調査に密着します。

深海の魔境ブラインプール。水面が波立っている様子はまるで海底の湖。塩分濃度が高いため、海水と混ざらない。(紅海北部、アカバ湾の海底 水深1770m)
ブラインプールで遭遇した深海魚・チゴダラ(左)(上)と、ブラインプールの表面で狩りをするイトアシエビの仲間

音楽は久石 譲さんが担当

ダイオウイカ以来、深海シリーズの音楽を担当しているのが、久石 譲さんです。今回、ディープオーシャンⅡのために、新曲7曲を収録しました。

今回新しい試みとして取り入れたのが、弦楽器のウード、よしの笛のナーイ、打弦楽器のサントゥールなど、アラビアの民族楽器です。オーケストラとのコラボで、異国情緒あふれる楽曲が完成しました。

久石 譲さんからのコメント

深海の秘境に挑むという新シリーズのテーマを依頼されたのですが、これが大変でした。深海に潜ってしまえば、どこも一緒。映像をみても変わらないですからね。(笑)今回は民族楽器を使って、遠い異国の雰囲気を味わってもらえるように考えて作曲しました。

紅海のサンゴ礁(左)(上)。ジンベエザメの子ども。体長4メートルほどの子どもが紅海に集まってくることがわかってきた

番組制作者が見どころを語る!

制作統括:岩崎弘倫

深海を知らないと地球を知ることができない

ダイオウイカを初撮影したNHKスペシャルの放送から、今年でちょうど10年です。NHKスペシャルで深海を特集するのは、今回で7作目になります。サウジアラビアに面している紅海は、地政学的な理由もあり、深海の調査が進んできませんでした。しかし、非常にユニークな成り立ちと生態環境があるということで研究者の間でも注目されてきました。ついにサウジアラビア政府が世界で初めての紅海深海大調査を行うということで、海外メディアとして唯一、同行させていただくことになりました。

ダイオウイカを撮影したときは2Kの超高感度のカメラを開発して撮影に挑み、2016~2017年のディープオーシャンシリーズでは、4Kの深海撮影システムを開発しました。今回は、初めて8K深海撮影システムで撮影したシリーズです。8Kは、やはり映像の細やかさが違いますし、深海の暗い奥行きを撮影するのに威力を発揮。ブラインプールの景観、表面の波などのディテールを捉えてくれたと思います。

地球の7割は海で、その90%は深海です。地球最大の生命圏とも呼ばれていますが、そこでどんな生き物が生きているのか、どんな環境なのか、まだよくわかっていません。気候変動や二酸化炭素の吸収などなど、地球の運命を握っているのは海だといわれています。その意味で、深海を知らないと地球を知ることができないのでは、と思っています。取材を重ねるたびに思いますが、深海の取材は壁が厚く、アクセスや安全面でも難しいです。挑み続けないといけない「ラストフロンティア」として、研究者の方々も取り組んでいると思いますし、我々も同様にこれからもチャレンジしていけたらと思っています。

深海調査船オーシャンエクスプローラー号で、サウジアラビアの紅海全域を5か月にわたって調査が進められた

ディレクター:溝渕貴裕

生命の起源をたどりたい

今回の深海調査には2台の潜水艇で挑み、その1台に私も乗り、研究者たちの調査に同行しました。潜水艇は中が非常に狭く、8時間ほどは身動きができない状態での撮影でした。当日は朝ごはんも極力抑え、水をなるべく飲まないようにして、緊急用トイレも用意しながら潜水艇に乗り込みました。調査船に持ち込んだ機材は、8Kのカメラ2台と、収録機器、モニターなど2トン弱です。入国する際は、何度も荷物にX線を通さなければいけなかったり、撮影の許可もなかなか下りなかったり、スケジュールも含めていろいろな面で悩まされました。

今回は、生命の起源をたどれたらいいなということを第一に取材に挑みました。世界が動いている中、我々は一体どうやって成り立ってきたんだろうという根本的な謎がこの深海にあるかもしれないと魅かれて行きましたし、それをたくさんの人に知ってほしいなと思っています。ぜひ皆さん楽しみにしていただきたいです。

深海調査へ潜航する潜水艇。ダイオウイカ撮影でも活躍した透明球型潜水艇。厳しい耐圧テストをクリアし、水深1000メートルまで潜れる安全認証を取得

潜水カメラマン:高村幸平

深海は宇宙のようだ

今回のシリーズは、8Kのカメラで撮影することができました。開発を始めたのは2019年、そこからシステムを構築するために丸2年がかかりました。開発期間はコロナの真っただ中だったので、打ち合わせもリモートでロケに行く前の準備に苦労しました。現場で想定外だったのは、紅海は深い海に潜っても水温がずっと21℃と下がらなかったことです。自分の撮影している足元には8Kの収録システムが置いてあり、そこからの熱も潜水艇内に回って、汗をかきながらの撮影が印象的でした。圧倒的に透明度が高かったです。また、100メートルを超えた深い海は見たこともないような風景が広がり、宇宙のようだと感動しました。それが映像にあらわれていたらいいなと思います。

NHKが開発した8K深海撮影システム。高精細、高感度の深海撮影を実現した

関連番組情報

■ダーウィンが来た!×NHKスペシャルコラボ
「お宝映像大公開!深海生きものワールド」

【放送予定】7月23日(日)[総合]午後7:30~7:58

深海といえば、かつては生きものに乏しい不毛地帯のイメージだったが、20年に及ぶNHK深海取材班の取材や近年の研究で実は深さや場所ごとに豊かで多様な世界があることが見えてきた。激レア生物のスクープが続く日本、生きものが巨大化する南極や、生きた化石が潜む熱帯の海。そして極限への適応を果たした生きものが住む超深海。今回、各地でとらえられた深海のスクープ映像の数々を、研究者と挑戦の歴史を振り返りながら一挙大公開!さらにその最新映像である、世界初潜入の“原始の海”紅海への冒険をNHKスペシャルの前に一部先行放送する。

■ディープオーシャン シリーズを一挙再放送

※NHKプラスでも1週間配信

●NHKスペシャル シリーズ ディープ・オーシャン「潜入!深海大峡谷 光る生物たちの王国」

【放送予定】7月23日(日)[総合]午前0:55~1:44 ※土曜深夜

新たな深海大冒険が始まる!ダイオウイカを撮影した深海取材班が再び集結。北米モントレー湾に潜航し、妖しく輝く深海モンスターたちに次々遭遇、発光生物のナゾに迫る。(2016/8/28放送)

●NHKスペシャル シリーズ ディープ・オーシャン「南極 深海に巨大生物を見た」

【放送予定】7月23日(日)[総合]午前1:45~2:34 ※土曜深夜

南極で世界初となる潜水艇調査に挑む。ダイオウイカより重さで上回るダイオウホオズキイカ、10メートルの大クラゲなど巨大生物を追う。氷の海には不思議な魔法が隠されていた。(2017/7/16放送)

●NHKスペシャル シリーズ ディープ・オーシャン「超深海 地球最深フルデプスへの挑戦」

【放送予定】7月23日(日)[総合]午前2:35~3:24 ※土曜深夜

マリアナ海溝6000メートルを超える「超深海」の謎に迫る。真っ白な姿で天女のように泳ぐ深海魚など奇妙な生物に遭遇。指先に1トンを超える水圧がかかる地球最深部を目指す。(2017/8/27放送)

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