1944年、ドイツ占領下のパリで何が起きたのか?

パリは燃えているか【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

8月23日(水)[BSプレミアム]午後1:00〜3:54

今回ご紹介するのは、実話を基にした戦争映画。1944年8月、ドイツ占領下にあったパリの解放を、フランスのレジスタンスや連合軍、ドイツ軍、それぞれの視点から描いたドキュメンタリータッチの作品です。

注目は国際的なオールスターキャスト。フランスからは日本でも大変な人気だったスーパースター、アラン・ドロン、フランスで絶大な人気のジャン・ポール・ベルモンド、歌手としても知られるイヴ・モンタン、ハリウッドでも活躍したシャルル・ボワイエ、「男と女」(1966)などのジャン・ルイ・トランティニャン、ミシェル・ピコリ。「巴里ぱりのアメリカ人」(1951)「恋の手ほどき」(1958)などのミュージカル映画でも知られるレスリー・キャロン、名優シモーヌ・シニョレと、当時のフランス映画界を代表する大スターや名優が出演しています。

アメリカからはカーク・ダグラスがパットン将軍、グレン・フォードがブラッドレー将軍、アンソニー・パーキンスや「ウエスト・サイド物語」(1961)のジョージ・チャキリスが連合軍の兵士を演じています。さらに「市民ケーン」(1941)の名監督オーソン・ウェルズがドイツ軍との交渉にあたる中立国スウェーデンの総領事ラウル・ノルドリンクを演じ、抜群の存在感をみせています。パリを占領するドイツ軍のコルティッツ将軍を演じるのはゲルト・フレーベ。「007/ゴールドフィンガー」(1964)で演じた悪役で、国際的な知名度を得たドイツの名優が、ヒトラーからの“パリを破壊せよ”との命令に苦悩する軍人を見事に演じ切っています。

脚本はアメリカの作家で、歴史や政治、性を題材とした斬新な小説やエッセイで注目されていたゴア・ヴィダルと、当時、新進気鋭の脚本家で後に映画監督となるフランシス・フォード・コッポラ。この作品で第二次大戦に詳しいと評価されたコッポラは、パットン将軍が主人公の「パットン大戦車軍団」(1970)の脚本を執筆、アカデミー賞を受賞します。そしてその業績が、「ゴッドファーザー」(1972)へとつながっていきます。

監督のルネ・クレマンは「禁じられた遊び」(1952)「太陽がいっぱい」(1960)など、幅広いジャンルの名作で知られるフランスの巨匠です。初の長編監督作「鉄路のたたかい」(1946)が鉄道労働者のレジスタンス活動を描くドキュメンタリータッチの作品だったクレマン監督、本作では実写映像なども交え、さまざまなエピソードが重層的に絡む見応えのあるドラマに仕上げています。

モーリス・ジャールの音楽も忘れがたい超大作。じっくりご覧ください。

プレミアムシネマ「パリは燃えているか」

8月23日(水)[BSプレミアム]午後1:00〜3:54


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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