アメリカでは驚異の大ヒット、3週続けて興行第1位になった『バービー』(2023)が日本ではかなりの苦戦、という予想外やビックリだった8月を経て、9月へ──。
さて、今月放送する映画の見どころは?
プレミアムシネマ「ドライビング MISS デイジー」
9月15日(金)[BSプレミアム]午後8:15〜9:55
※BS4K同時放送
プレミアムシネマ「アルゴ」
9月18日(月・祝)[BSプレミアム]午後1:00〜3:00
ジェシカ・タンディがアカデミー主演女優賞を受賞した『ドライビング MISS デイジー』(1989)と、イランのアメリカ大使館で実際に起きた人質救出事件を題材にした『アルゴ』(2012)は、どちらもアカデミー作品賞受賞作。ところが、ノミネートが発表されたときの話題は、2作とも監督賞候補に入っていないことだった。作品賞の受賞作を予想するときは、監督賞の候補に名前の入っていない作品は脇に置いて、残りの作品で受賞作を推察することが多い。第95回のように作品賞候補が10作、監督賞候補が5人ということになると真っ先に監督賞に入っていない作品を除いて残りの5作で考える。それで失敗することはほとんどなかったはずだが、監督賞候補にブルース・ベレスフォード監督の名がなかった『ドライビング MISS デイジー』と、ベン・アフレック監督の名がなかった『アルゴ』が作品賞を受賞した。
実は、候補作が監督賞の候補に入っていなかった例はそれまでにもあり、アカデミー賞の授賞式が始まった第1回(1927~28年に公開された作品が対象)、このときに限り、監督賞がドラマと喜劇に分かれ、作品賞も2部門あったのだが、作品賞を『つばさ』(1927)、芸術的優秀作品賞を『サンライズ』(1927)が受賞している。このときの監督賞はドラマが『第七天国』(1927)のフランク・ボーゼージ、喜劇が『美人国二人行脚』(1927)のルイス・マイルストン。第5回(1931~32年に公開された作品が対象)に『グランド・ホテル』(1932)が作品賞を受賞したときは『バッド・ガール』(1931)のフランク・ボーゼージが監督賞を受賞している。
プレミアムシネマ「Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?」
9月4日(月)[BSプレミアム]午後1:00〜2:47
ところで今月は主題歌が気になる映画がそろっているのもお楽しみ。
小説『アンナとシャム王』(1944)を原作にしたブロードウェイ・ミュージカルの映画版、『王様と私』(1956)の王様(ユル・ブリンナー)と家庭教師に雇われた英国人女性アンナ(デボラ・カー)が踊るときのナンバーをタイトルにしたのが周防正行監督の『Shall we ダンス?』(1995)。そのハリウッド版が今回放送されるピーター・チェルソム監督、リチャード・ギアとジェニファー・ロペス共演の『Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?』(2004)。役所広司の役をリチャード・ギアが演じた。
プレミアムシネマ「カサブランカ」
9月28日(木)[BSプレミアム]午後1:00〜2:44
映画音楽といえば真っ先にその名が挙がりそうなのが『カサブランカ』(1942)で黒人ピアニスト役のドーリー・ウィルソンが演奏する「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」。この曲は映画のために書かれたものではなく、1931年にハーマン・ハプフェルドがミュージカル作品のために作詞作曲したもので、『カサブランカ』に使われ大ヒットした。
プレミアムシネマ「リオ・ブラボー」
9月22日(金)[BSプレミアム]午後1:00〜3:22
『リオ・ブラボー』(1959)では、歌手としても人気だったディーン・マーティンとリッキー・ネルソンが二人で歌って大ヒットした曲が「ライフルと愛馬」。これが保安官側のテーマ曲なら、悪党側の曲が「皆殺しの歌」。原曲は古いメキシコ民謡「De Guello」で、この曲はその昔、アラモ砦の総攻撃のときに旧メキシコ軍がマリアッチのスタイルで朝から晩まで演奏し続けたそうだ。
「8K完全版 2001年宇宙の旅」
9月16日(土)[BS8K]午後2:30〜5:00
そして『2001年宇宙の旅』(1968)はリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」やヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」などが使われていることで有名だがこの映画の音楽担当者はいなくて、スタンリー・キューブリック監督が自分で選んだといわれている。もしかするとキューブリックが自分の好きな曲だけを並べてみた…?だったらおもしろいけど。
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【コラム執筆者】
渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん
共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。