“キング・オブ・クール”とも呼ばれた不世出の大スター、スティーブ・マックィーン。1980年、50歳の若さで亡くなって40年以上、今も世界中のファンから愛されています。今回ご紹介するのはマックィーン主演の傑作犯罪アクションです。
マックィーン演じるドクはプロの強盗。有力者ベイノンの力で刑務所から出所し、そのベイノンの依頼で、妻のキャロル、ベイノンが送りこんだ男たちと銀行を襲撃し大金を強奪します。しかしドクとキャロルは裏切りによって警察とベイノン一味から追われることに。2人の逃避行“ゲッタウェイ”は…。
俊敏で無駄のない動き、苦み走った表情、時折見せる少年のような笑顔…。マックィーンの唯一無二のオーラは半世紀以上たった今も変わりません。
キャロルを演じるアリ・マッグローは「ある愛の詩」(1970)で世界的なスターとなりました。本作でマックィーンと恋に落ち、結婚。愛し合いながらも緊張感のある夫婦を見事に演じています。とりわけ荒涼としたごみ処分場での場面は印象的です。
キャストが魅力的なのがペキンパー作品。小さな役でも忘れられず、なじみの仲間に再会するかのようで、何度も見たくなってしまいます。強面の権力者ベイノンを演じるのはベン・ジョンソン。これが4本目のペキンパー作品です。1918年生まれのジョンソンは父親が牧場主で、自分も父もロデオのチャンピオン。得意の乗馬を生かしてジョン・フォード監督作をはじめ数々の西部劇でスタントを務め、俳優となりました。年齢を重ねてからは渋みも加わり、フォード監督を敬愛するピーター・ボグダノヴィッチ監督の「ラスト・ショー」(1971)で映画館主を演じアカデミー助演男優賞を受賞しました。村上春樹さんの小説「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」にも登場するジョンソン。本作の存在感も抜群です。
「ゴッドファーザー」(1972)でも強烈だったアル・レッティエリとリチャード・ブライト、ペキンパー作品常連のスリム・ピケンズ、ボー・ホプキンス、ダブ・テイラー、そしてジョン・ブライソン。大きなメガネとヒゲ、たっぷりした体格で“会計士”を演じるブライソン、実は本職は写真家で、映画スターや政治家のポートレートなどが有名ですが、すごみのある不敵な表情がたまりません。
サム・ペキンパー監督といえば、スローモーションと複数の映像・音を交錯させたアクション演出。本作でも劇的な効果を上げています。ご注目ください。
プレミアムシネマ「ゲッタウェイ」
9月12日(火)[BSプレミアム]午後1:00〜3:04
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【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)
1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。