泣いて笑って!フレンズミーティングへようこそ

北海道って本当に広いんです。
最北の駅から最南の駅まで10時間以上かかります。
そのうえ駅から何十キロもバスに揺られないと、
たどり着けない町がたくさんあります。

そんな広い北海道で、時に片道500キロの距離をこえて、
地域のみなさんが集まってくるテレビ番組の企画会議があります。

それが「フレンズミーティング」です。
まずは、その写真をご覧ください。

北海道の北で 南で 東で計4回開催してきました

いわゆる「企画会議」の堅いイメージとは違った雰囲気を感じてもらえるでしょうか。
集まっているのは、ネイチャーガイド、主婦、歌人、
自動車塗装業に、展望台の管理人、
駐車場の経営者、ジビエ愛好家、町議会議員、
小学生、中学生、大学教授。テレビ局の人事担当、カメラマン。
多種多様な人がごちゃまぜになって、番組づくりや地域づくりについて語ります。
気付いたら10時間以上もぶっ通しでしゃべっていたことも!

こうした対話の中から、年間40本以上の放送を生み出しています。

白熱のミーティング。疲れたら外に出て自然を感じます

テレビ番組の作り方としては、かなり情熱的なやり方が注目され、
最近では、鹿児島、熊本、東京、そして海外との交流も生まれてきました。
今回は、このフレンズミーティングとはいったいなんなのか。
その熱気の正体をお伝えしたいと思います。

ノリの違いを乗り越えろ

こんにちは!
「ローカルフレンズ滞在記」という番組の窓口をしている
NHK札幌放送局の大隅亮です。

私たちが作っている番組を一言であらわすと、
「地域でプライドを持って暮らしている人が、
テレビを通じて、仲間の豊かな暮らしを紹介する」

というもの。
その担い手をローカルフレンズと呼んでいます。
(グッドデザイン賞に選ばれた番組の詳細は、こちらの note記事(※NHKサイトを離れます)で紹介しています)

NHK北海道ではこの4年間に
およそ30組のローカルフレンズのみなさんと
170本以上のニュース企画や番組を作ってきました。

北海道にローカルフレンズがいる

これだけ大量のテレビ番組を、地域の人が主体的に作った例は、きっと珍しいはずです。
が……。
ご想像通り、テレビ局と地域の人が共創する過程では苦労が多く、
決して楽な道のりではありませんでした。

一番大きいのは、ノリの違い。
テレビ局のノリで作っていると、ちょっと強引というか、地域の文脈からズレる時があります。
わたしもよく、「大隅さんは無茶ぶりが多い。テレビ局の人っぽい」と、
ローカルフレンズのみなさんに言われていました……。

番組ロゴと筆者。

そんな地域とメディアのあいだの壁を乗り越えようと、
試行錯誤をしてきて、たどり着いた答えの一つが
「フレンズミーティング」です。

フレンズミーティングはこんなふうに進む

たとえば、こちらのネモさんという女性。

ネモさんこと齋藤智美さん。旧姓は根本さん

オホーツク海に面した標津しべつ町でガイド業をしています。
右手にはホッカイシマエビ! いかしてますね~。

ネモさんは標津町や近隣エリアの海の魅力を発信したいと、
ことし、ローカルフレンズに応募してくれました。
(※ローカルフレンズは番組ホームページから公募しています)


そんなネモさんを、この夏、知床で開催された
フレンズミーティングにお招きしました。
さあ、どんなミーティングなのか、出かけましょう!

2023年8月5日(土)、集まったメンバーは30名ほど。
まず向かったのは地域の芸術祭です。
フレンズミーティングでは会議をするだけでなく、
訪問した地域のことを知るツアーを組んでいます。

あしの芸術原野祭へ。おもしろそうな立て札が…

すると飛び込んできたのは、「おもいでおあずかりします」という文字。
何やらおもしろそう。
この芸術祭では、地域の人や来場者の思い出の品を収集し、展示していました。
すぐにこの企画に食いつく、ローカルフレンズのみなさん。
次々に思い出を預けています。
「こんな企画、うちでもやってみたい」という声も聞こえてきました。

と、これがチャンス!
ローカルフレンズのみなさんがおもしろがる話題は、
きっと北海道のみなさんがおもしろがってくれるはず。
NHKの制作チームはすぐさま現場で撮影許可を撮り、カメラを回します。

その場で許可を得て撮影し(左) 映像が放送される(右)

結局、9日後の夕方のニュース番組で、
この話題が「ローカルフレンズニュース」という企画で
オンエアされることになりました。

テレビづくりは自然体

さて芸術祭の後は、合宿する宿泊施設に移動します。
そこでは地域の高校生が小さなイベントを開いていました。

高校生が調理した焼き鳥や焼きそばを食べながら、
ローカルフレンズ、NHK職員、高校生が地域に対する考えを語り合います。
「地域だと人間関係がせまいって思うことある?」
「いや、それはないですね。みんな優しいです」
「でも、これ以上、人が減るのはいやですね。さみしいから」

高校生と交流(左)ヒグマ被害をめぐって熱いトーク(右)

かと思えば、別のテーブルでは、
ローカルフレンズに加わったばかりのメンバーが、
ベテランのローカルフレンズに話を聞いています。

「番組作りはね、そんなに簡単なものじゃないよね。目立てばやっかまれることもある」

と、西興部にしおこっぺ村のローカルフレンズ(高橋啓子さん)が助言したり、

「誰か一人に向けて番組を作ると、多くの人に届くものになる」

と、中標津なかしべつのローカルフレンズ(塩崎一貴さん)が伝えていたり。

地域の人たちが主体的にテレビ番組を作り、
そこで得られた知見が、別の地域へと伝承されていく。

これまでのテレビ業界にはなかった仕組みだと思います。

ミーティングの締めは番組のテーマソング。感極まる参加者たち
北海道は広いが心は近い

こうして2日間で10数時間、ひざを突き合わせて話し合った結果、 数えきれないほどの人と人とのつながりが生まれ、さらに3本のニュース企画も放送されました。

――ネモさん、参加してみていかがでしたか?

ネモさん「あったかいコミュニティだと思いました。番組を見て、ディレクターとローカルフレンズの仲が良いのは感じてましたけど。まさか、ローカルフレンズ同士がこんなにヨコにつながっているとは!」

――おお。どんなところで、そう感じました?

ネモさん「久しぶりに会って『最近どう?』からはじまって、『あの放送、感動したよね』って番組の話をして。ローカルフレンズのみなさんは関心を持つのが自分の地域だけじゃなくて、北海道の反対側まで来ちゃうじゃないですか。それがすごい」

――楽しんでもらえたようでよかったです!

ネモさん「今回、どうしても娘を連れていかないとならなかったんですけど、みんなに遊んでもらって、ありがたかったです。子どもに優しくて、次世代のために何かを残そうっていう気持ちが共有できる仲間だなと思いました」

娘のミナトちゃんは、みんなとフレンズになった

ローカルフレンズってなんだろう?

このローカルフレンズの取り組みって、いったいなんなのでしょうか。
よく言われる「ジャーナリズム」とも「地域プロモーション」ともちょっと違います。

岐阜県の大学院、情報科学芸術大学院大学でメディアを研究している金山智子教授は、
この“謎”に注目してくれた研究者です。

去年、北海道のローカルフレンズを訪ねるツアーを組み、
金山教授と私たちは、番組づくりに参加した人にどんな変化が起きているのか、分析していきました。

調査のための走行距離は1,000キロを超えた

すると、あることに気づきました。
番組づくりの過程の<家族や友人との会話>が
地域づくりに役割を果たしていたのです。

たとえば、中標津のローカルフレンズ・塩崎一貴さんは、
ローカルフレンズに応募してから番組をプロデュースするまでに
6か月ほど準備期間がありました。
その間、もちろんNHKのディレクターとも話はしていますが、
それ以上に塩崎さんのパートナー(妻)との会話の中で、
「自分の手で地域を作っていこう」という気運が高まっていきました。

「長い時間をかけて番組を作ると、
その間に家族や友人とたくさん会話をすることになり、
地域づくりの主体だという意識が高まる」

実際、塩崎さんは、番組制作後にコミュニティFMのパーソナリティになり、
地域のフェスの主催者にもなっています。
番組作りを通じて、どんどん活躍の場を広げていったのです。

この知見。なんと、フランスで発表する機会がありました。
世界中のメディア研究者や実践者が集まる
国際メディアコミュニケーション学会という国際学会です。

フランスのリヨンでローカルフレンズの取り組みを発表

学会に行ってみると、私たちの関係性の近さが注目され、
こんな質問を受けました。
「どうやったらそんなに地域の人と仲良くなれるの? 回数?」

その質問をしてくれたのは、暴力事件が多いブラジルで、
市民から寄せられる情報を頼りに報道をしている記者の方でした。
「ミーティングですかね。一緒にご飯を食べたり、
歌ったり、話し合いを重ねる中で仲良くなります」と答えると
「一緒に歌うの?」
と驚いていたのが印象的でした。

日本と社会状況が大きく違うブラジルでも、
地域とメディアの共創に大きな可能性を感じているとのことでした。

北海道と鹿児島の交換留学

さて、この春、北海道から遠く離れた鹿児島で、 「ローカルフレンズ鹿児島」の放送が始まりました。

左奥に桜島。植物も動物も、北海道から見れば「熱帯」です

自然環境も風土もまったく違う場所で、
同じ仕組みで番組が放送されています。
一つの番組がこうして地域を越えて展開されるというのは、
全国各地に放送局があるNHKならではかもしれません。

「ぜひ、鹿児島のローカルフレンズと交流したい!」
先日開催されたフレンズミーティングでは、
北海道のローカルフレンズのみなさんから、こんなテレビ番組のアイデアが出ました。

◎ 同じ職業の人(漁師など)が互いの職場で働く
◎ 火山の噴火(桜島&有珠山)など自然災害との付き合い方を学ぶ
◎ 鹿児島の人にマイナス20度の世界を体感してもらう

そんな企画のアイデアを鹿児島のローカルフレンズに伝えたところ、
「え~、寒いのはちょっと苦手かも・・・でも受け入れには自信があります!」
とのことで、まずは北海道のローカルフレンズが鹿児島に訪問することになりました。
その後、鹿児島のみなさんに北海道に来てもらい、
「ローカルフレンズ交換留学」というニュース企画を放送する予定です。
日本の北も南も合流して、
フレンズミーティングもどんどんにぎやかになりそうです。

そして!
この記事の中でご紹介したネモさんによる
ローカルフレンズ滞在記」プロデュースもはじまっています(2023年10月)。
1万年も昔からサケの食文化があった根室海峡エリアで、
いま、どんな暮らしが営まれているのか。
そんなネモさんにしか作れない番組をぜひご覧ください。

「都会に比べて、地方の活動にはメディアの光が当たらない」。
もともとローカルフレンズの放送がはじまったのは、そんな課題意識からでした。
いま、北海道には30組ほどのローカルフレンズがいて、
鹿児島にも毎月のようにローカルフレンズが増え、
地方のことが以前より解像度高く見えるようになりました。
さらには、「フレンズミーティング」という交流の場ができたことで
エリアとエリアが接続するようになり、
地域の人が主体的に放送を作るカルチャーも広まってきました。

もう一度、言います 北海道は広いが心は近い

私たちのプロジェクトは、「あらゆる人が地域活動しやすい社会」を掲げています。
1つの放送、1つのミーティングでできることには限りがありますが、
網の目のようなネットワークを編んでいき、
よりよいローカルライフの実現に貢献していきたいと思います。
この記事を読んで、北海道や鹿児島、そして全国の地域活動を応援いただけると嬉しいです。

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