これまでの街歩き

アルプスが見える街Ⅰ
アヌシー/ フランス

2010年9月5日(日) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2010年6月

世界地図

地図

場所

フランス東部、スイスやイタリアとの国境に近い街アヌシー。人口はおよそ5万。ヨーロッパ屈指の透明度を誇るアヌシー湖に面しています。湖の清らかな水が川と運河で街に流れ込み、美しい景観を織り成していることから“アルプスのベニス”と呼ばれています。
現在の旧市街ができたのは12世紀ごろ。その後、ジュネーブ伯爵が移り住み、伯爵領の首都として発展しました。15世紀に入ると、サヴォア公爵の支配下に置かれましたが、行政機能が集中するアルプスの重要な街としてあり続けました。フランスに組み込まれたのは19世紀半ばのことでした。また、アヌシーは思想家のジャン・ジャック・ルソーが暮らした街としても知られています。アルプスの豊かな自然に恵まれ、一年中スポーツを楽しむことができるこの街は、フランス人の多くが一度は住んでみたいと願うあこがれの街といわれています。

Information

湖の遊覧船

アヌシー観光で外せないのが、湖を巡る遊覧船。アルプスの絶景を楽しむことができます。そもそもアヌシー湖は、18000年ほど前に氷河が溶けてできたもの。湖の周囲は約38km。フランスで2番目に大きい湖です。遊覧船はおよそ2時間かけて7つの村を巡ります。途中下船もできます。
タロワール村は、かのセザンヌが家族と休暇を過ごした美しい村。そのときに描いた傑作『青い湖(1896年)』とほぼ同じ風景を、現在でも見ることができます。
一方、湖の南端のドゥサール村にある「湖の南端自然保護区」は、野生のビーバーが生息することで知られています。夜行性なので、姿を見るのは難しいのですが、“ビーバーのダム”は見ることができます。陸上を歩くことが大嫌いなビーバーは、木を集めてダムを作り、川の水位を上げることで、川べりにあるエサ場まで泳いでたどりつけるというわけ。ビーバー探しに夢中になって、遊覧船の最終便に乗り遅れないよう、注意してくださいね。

絶景の教会とカリヨン

丘の上にあるアヌシーで、一番眺めのいい教会“ヴィジタシオン寺院”。高い塔の上にある部屋には、とある楽器が備えつけられています。それは“カリヨン”。大小たくさんの鐘をつるし、それをオルガンのような鍵盤につないで演奏します。鐘の数は37個。3オクターブの音を奏でることができるんです。
カリヨンは、14世紀ごろにベルギーで誕生。その後、フランスの教会でも盛んに。アヌシーのあるサヴォア地方はカリヨンを設ける教会が多いのです。理由は、フランスを代表するカリヨンの製造工場がアヌシーにあるから。創業1796年の工場は人気の観光スポット。銅と錫(すず)を溶かして型に流し込む作業を見学することができます。
カリヨンの音は、風向きによっては3km先まで届きます。夏の間、主に土曜日の夕方に演奏会をおこなっているので、アルプスの美しい景色をカリヨンの調べとともにお楽しみくださいね。

ガマの形のチョコレート

アヌシー名物のチョコは、アヌシーにゆかりの深いある植物の形を真似たものですが、わかりますか?
答えの前に、まずは作り方。水と砂糖を1時間ほど火にかけた液体に、エスプレッソコーヒーを注ぎ混ぜます。それが冷める間に、でんぷんの粉を浅い箱に入れ、専用の道具で棒状のくぼみを作ります。そこに先ほどの液体を注ぎ、置くこと48時間。外側は砂糖の壁、中にはとろっとしたエスプレッソコーヒー、という不思議な食感のものができあがります。仕上げに、溶かしたチョコレートでコーティングし砕いたチョコレートを振りかけて完成。
さて、このチョコレートのモチーフになった植物とは?正解はアヌシー湖の水辺に生えている植物“ガマ”の穂。ある菓子職人が湖を散歩していてアイデアがひらめき、1920年代に初めて発売されたんです。
湖の水辺ではガマのほかにも“アシ”“スゲ”“カヤ”などの植物をよく目にします。これらは、魚の産卵場所になったり、水質を浄化する作用があったりするので、街をあげて保護しています。
「ガマの穂チョコ」は、街のいろんなお店で売っているので、味比べするのも楽しいですよ。

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