2017年1月10日(火) 初回放送
語り:羽田美智子
撮影時期:2016年10月
ストラスブールはパリから北東へ約400km、ライン川をはさんでドイツとの国境に位置します。ベルギー、スイスなどとも近く、まさにヨーロッパの中心といえる場所にあります。ストラスブールとは「街道の街」を意味しますが、陸路だけでなく、ライン川を使った水運でも栄えました。2007年に高速鉄道TGVが開通し、パリからは1時間45分と気軽に訪れることができるようになりました。
また、教育や芸術のレベルが高く、ストラスブール大学には、フランス全土、そしてドイツなどから学生が来ています。
ストラスブールの街の鳥はコウノトリ。毎年3月ごろ、アルザス地方にやってきます。15世紀に完成した大聖堂にもその彫刻があるとおり、コウノトリはすでに中世から、ストラスブールの人々にとって身近な存在でした。世界中で知られている「コウノトリは赤ちゃんを運んでくる」という伝説がありますが、街では窓辺に角砂糖を置くと、コウノトリが代わりに赤ちゃんを届けてくれるという言い伝えがあります。
19世紀の後半以降、ストラスブールは普仏戦争、第1次世界大戦、第2次世界大戦と、戦争が起きるたびに、フランスとドイツとの領土争いに巻き込まれ、80年たらずの間に4回も国境線が変わりました。そんな激動のさなか、コウノトリは平和の象徴として描かれるようになりました。
コウノトリは一時は絶滅の危機にさらされましたが、地元の人々が人工ふ化に取り組み続けた結果、800組が巣作りするようにまでなりました。
街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!
ストラスブールはフランスとドイツの味を取り入れた、おいしいグルメがたくさんあります。看護師のギヨームさんと、学生のコラリーさん、2人のストラスブールっ子が、気軽に味わえる「地元の味」を紹介します。
タルト・フランベ
薄くのばしたパン生地に、玉ねぎとベーコンなどをトッピングして、薪(まき)のオーブンでカリッと焼き上げたもの。ドイツでも造られていますが、ストラスブールならではの一押しの味は、地元産チーズ「マンステール」をのせたもの。アルザスの地ビールがとてもよく合います。
クグロフ
帽子のような形をしたパン菓子。ドイツやオーストリアでは、バターの入った生地に干しブドウやアーモンドを入れた甘いものが普通ですが、ストラスブールでは、ベーコンや玉ねぎを入れた塩味のクグロフを、食前酒のつまみとしていただきます。アルザス産の発泡ワインを合わせるのが地元流です。
ブレッツェル
メガネのような形をした塩味のパン。朝食や子どものおやつ、ビールのつまみにもなります。ドイツでも見かけますが、アルザスのブレッツェルは、大麦の量が少し多めなので、外側はカリッ、中はふわふわの食感が長続きします。ストラスブールでは市場で焼き立てを買って、歩きながら食べる人々の姿が見られます。
街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます!
ストラスブールから北へ、電車とバスを乗り継いで50分ほどのところにあるスフレンハイムは、アルザス伝統の陶器を作り続ける小さな村。バスで乗り合わせた女性に聞くと、15軒の工房があるとのこと。
バスを降りて大通りを歩くと、陶器のお店が並んでいます。1168年創業という伝統ある工房を訪ねて、作られる工程を見学しました。陶器の成形は跡継ぎの息子さん、絵付けは奥さん、うわ薬をつける最後の仕上げはご主人、というように一家で一つ一つ手作りで作っています。
アルザスの陶器は、銅や鉄でできた調理器具が高価だった時代に、庶民がおいしい料理を作ることができるようにと作られていたもの。さらに、アルザス陶器の材料となる粘土は多孔質なので、これで料理をすると、食材のうまみを吸収し凝縮して食材に戻すため、おいしい煮込み料理ができるそうです。陶器窯の余熱を利用して作った郷土料理「ベックオーフ」を囲んで、家族で乾杯!