これまでの街歩き

出会いの階段めぐり
シュツットガルト/ ドイツ

2019年1月22日(火) 初回放送

語り:イッセー尾形

撮影時期:2018年11月

街の「ハトを守るおじさん」

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 街の中心にある宮殿と広場の周りは歴史がありそうな立派な建物ばかり。そんな美しい街並みをうっとりと眺めながら路地を歩いていくと、石畳に散らばった白い物を一心に拾い上げている男性と遭遇。よく見てみるとタマゴ!?割れてしまったのではないかと心配になり、思わず声を掛けてみると「うそのタマゴだから大丈夫」と言うではありませんか。拾っていたのはなんとプラスチックで作られた偽物のタマゴ。ハトが街の人たちに嫌われて住みかを追われてしまわないよう、偽のタマゴを抱かせて数を調整しているのだとか。
 御年81というこの元気な男性、幼い頃に体験した戦争で破壊された街の姿を目の当たりにしてきたのだそう。みんなが長い時間をかけて復興させてきた街がいつまでも平和であって欲しいという思いから、平和の象徴であるハトを守っているのだと教えてくれました。
 男性が向かったのはシュツットガルトで2番目に古いという教会。屋根に作られた小さな窓辺にハトの群れが。この教会も戦争で破壊され再建したのだそう。歴史を感じる街並みも美しい教会も、戦禍から立ち上がってきた街の人たちの強い思いを表しています。

街の「編み物階段」

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 路地を抜けたところに階段が…、どうやらずっと上の方まで続いているよう。登り始めたものの階段は驚くほど急で、上っても上っても先は見えない。ようやく上り切ったところは車道で、通り沿いに家がずらっと並んでいます。この車道を挟むように、その先にはまた階段が!どうやら階段は斜面を上るためにクネクネと造られた車道をショートカットするものだということが分かってきました。
 意を決して急な階段を上り続けていくと…、そこには女性たちが何人も。階段の手すりにカラフルな毛糸で作った編み物をくくりつけています。声を掛けると「冬を迎える準備をしているの」という答えが。階段も風邪をひかないように温かくするんだとか。近所に暮らす女性たちにとってこの階段は「ふれあいコーナー」の様な存在で、時には見知らぬ人たちと出会う場所でもあるのだとか。シュツットガルトの階段は、街を結び、人をつなぐ、大切な場所なのだと教えてくれました。

街の「お見合い階段」

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 一日中階段を上り続けたシュツットガルトの街歩き。日も暮れ始め、そろそろ帰ろうかと下りていくと、階段を埋め尽くす人たちとバッタリ!上から下まで、男女が2列に座って何やら楽しそうにおしゃべりに夢中な様子。階段の中腹には小さなテーブルが置かれ、鍋から湯気も。気になって近づいていくと、テーブルの横にいた若者が腕を振り上げ「チ~ン!」と鳴らした鈴の音にビックリ。さらに若者が間髪入れずに放った「はい交代!」という声にビックリ。この掛け声に反応したのは2列に並んで話し込んでいた女性たち。階段を1段ずれて、違う相手とおしゃべりをはじめたではありませんか。チ~ンと鳴らした若者に聞いてみると「階段スピード・デートの最中さ」と満面の笑顔で応えます。街の若者たちが出会いを求めて集まっていたんだそう。シュツットガルトの階段、こんな使い方もあるのだと目からウロコでした。

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