Eテレ(教育テレビ)の歴史を彩ってきた懐かしい子ども番組をアンコール放送する「Eテレタイムマシン」。4月に放送するのは、1996~2003年に放送して人気を博した「ハッチポッチステーション」。1996年放送の第1回~第12回を3回ずつ4週にわたってお届けします。
グッチ裕三さんに、アンコール放送が決まっての思いや、制作時のエピソードを聞きました。
「ハッチポッチステーション」…物語の舞台は、めったに電車が来ない駅、ハッチポッチステーション。駅員のジャーニーと、ハッチポッチステーションホテルの支配人グッチ(グッチ裕三)らが寸劇を繰り広げるパペットバラエティーショー。
グッチ裕三さん
インタビュー
アンコール放送は不思議な気持ち
「ハッチポッチステーション」の再放送を僕はどういうふうに受け止めるのが正解なのか、誰かに聞きたいよね。単純にうれしいし、若いころの映像だからてれくさい。不思議な気持ちだよ。これまで何度か再放送はしていたけれど、反響があったからこその今回のアンコール放送だと思うから、本当はありがたいことなんだろうけど、自分の中では一応終わっている番組だからね。
初めて「ハッチポッチステーション」をご覧になる方には、「どうだ、僕若かったろう!」と言いたいし、当時から見てくれていた方には、「どうだ、若かったろう! お互いに!」と言いたい。
当時、夢中で番組を作っていたのは間違いないんだよ。僕の芸能人生の中でも、一番エネルギーが強かったときじゃないかな。当時は、コーナーの撮影を一日に10本もこなしていたけれども、全然疲れなかったんだよ。非常に燃えていた。

「ハッチポッチステーション」のノウハウは、「エド・サリヴァン・ショー」
「エド・サリヴァン・ショー」という、1948年から23年間、全米で放送された人気の音楽バラエティーがあるんだけど、それは僕のバイブル。「ハッチポッチステーション」のノウハウは、全てそこからきているんだ。
その番組には、例えば歌手のエルヴィス・プレスリーや、フランク・シナトラなど、当時一世を風靡した人が、全員出演していたんだ。レジェンドたちの一番旬の時期が捉えられていて、映像に力があったんだよ。
その「エド・サリヴァン・ショー」に、パペットが登場するコーナーがあってさ。「セサミ・ストリート」を生み出した、ジム・ヘンソンがそのコーナーを作っていて、それだけを一つにまとめて保存していたくらい好きだったんだよ。
「ハッチポッチステーション」の仕事をもらったとき、「エド・サリヴァン・ショー」のビデオを番組のプロデューサーに見せて、「こういうのをやりたい」と伝えたんだよ。もともとパペットを使うことは決まっていたけど、自分の中では番組でやりたいことの具体的なイメージがあったから、だからこそ今でもみなさんに評価いただける番組になったんだと思う。

世界のビッグヒット曲をアレンジ
バンドにとって選曲は命というくらい重要なんだ。僕は選曲が得意だったから、この番組で使う楽曲も厳選していたよ。世界のビッグヒットを取り上げていたんだけど、そういう曲はやっぱり文句なしでひかれる魅力があるんだ。そういう曲しか僕は選ばなかった。しかもそれを、アレンジして誰もが知っている童謡と結びつける。そうしたことで、子どもたちにも響いたんだと思う。だから今見てもおもしろいんだろうね。
「ハッチポッチステーション」の中でマイケル・ジャクソンのまねをしたんだけど、それを見て育った子どもたちが、大人になって本物のマイケル・ジャクソンを見たときに、「この人、グッチさんのまねしてる!」って言った人がたくさんいたらしいんだよね。その話を聞いたときは、僕大喜びしたよ。
ミュージシャンの中には、この番組をきっかけに洋楽に興味を持って、この業界に入った人もいるみたい。King Gnu(キングヌー)の井口 理さんは、「ハッチポッチステーション」が音楽のルーツだと言ってくれているみたい。ほんと、困ったもんだよ。

予想を下回るオチをつける
ストーリーの起承転結の“転結”の部分は「僕に任せてほしい」って、作家の人にお願いしていたんだよね。「僕がオチを作るから骨太の台本書いてくれ」って言ってね。オチをつけるときに意識していたのは、予想を下回ること。
ハイブローなことをすると、「お前、何気取ってんだ」ってことになるし、並なことをやるとなめられる。だけど予想を下回るオチをやると、「あの人はわかってやっているな」って深読みされるんだ。
例えば、三味線を弾こうとしてバチで皮を破っちゃったり、バイオリンを弾こうとして、弓が飛んでいっちゃったり。予想を下回るオチを徹底的にやっていると、「オイオイ!」って誰もがつっこみたくなるような笑いになるんだ。それがきっと、子どもたちにウケたんだね。
改めて振り返ってみると、世界のヒット曲とか僕の大好きなお笑いとか、僕がインプットしたすべてのものをこの番組に詰め込んでいたんだね。そういった意味ではものすごく、思い入れの強い番組。

「ハッチポッチステーション」
ここが見どころ!
「Eテレタイムマシン」を担当する植原智幸専任部長に、「ハッチポッチステーション」の見どころを聞きました。
★「Eテレタイムマシン」のトップバッターにふさわしい!
植原智幸専任部長(以降、植原):「Eテレタイムマシン」の第一弾として「ハッチポッチステーション」を選んだのは、明るく華やかな番組で、トップバッターにふさわしいと考えたからです。非常に個人的な話ですが、「ハッチポッチステーション」に対して実はネガティブな感情を抱いていました。というのも、私は1999年から2001年まで子ども番組「うたっておどろんぱ」の演出を担当していて、当時音楽を武器にした子ども番組として非常に人気だった「ハッチポッチステーション」を一方的にライバル視していたんです。しかし、年を重ねた今では、敵視していたこの番組をむしろ同じ時代を乗り越えた仲間のように思っています。

★「ハッチポッチステーション」の見どころポイント!
1. グッチさん×ジャーニー(林家正蔵さん)の掛け合い
植原:放送当時は林家こぶ平さんだった林家正蔵さんが、グッチさんの相方のような存在「ジャーニー」の声を担当しています。グッチ裕三さんと林家こぶ平さんの掛け合いは非常におもしろいですね。きっと撮影現場で生まれたアドリブも多かったんだろうと思います。
2.「ハッチポッチステーション」ならではのアレンジで人気の楽曲を披露
植原:音楽コーナーでは、「アイアイ」「森のくまさん」などの童謡を、グッチ裕三さんのバンド「グッチ裕三とグッチーズ」がハッチポッチステーションならではの味付けをして、披露しています。童謡だけでなく、かつて世界で大ヒットした洋楽もアレンジされた形で楽しめます。
3. いとおしいキャラクター
植原:ジャーニーのほかにも、「ミス・ダイヤグラム」や、彼女の愛犬「トランク」など、登場するキャラクターがとにかくいとおしいです。第1回〜12回までを4週にわたってお届けするので、回を重ねて見るにつれ、キャラクターへの愛がより深まると思います。



★レア度が高い! 初期(第1〜12回)を放送
植原:当初は「ハッチポッチステーション」の中でも、勢いに乗ってきた中期の回を放送しようかと考えていましたが、新しい番組を始めるときならではの“熱”ってあると思うので、初期の回をお届けすることにしました。初期の回はあまり再放送されていないので、レア度が高いと思います。なかなか第1回から見ていた方は少ないと思うので、この番組がどうスタートしたのか、じっくりと楽しんでいただきたいですね。「Eテレタイムマシン」が長く続くなら、中期、後期と段階を踏んでご紹介したいです。

★伝説的教育番組をラインナップ
植原:5月からは「ひとりでできるもん!」を放送します(5月5日は、「Eテレタイムマシン」が放送休止のため、「ひとりでできるもん!」は5月12日から放送)。この番組は主人公の舞ちゃんが料理に挑戦するという内容で、教育テレビで視聴率2桁を取るという偉業を成し遂げた伝説の番組です。
初代・舞ちゃん役を務めた元子役の平田実音さんが、残念ながら若くして亡くなられました。子役スターの活躍をしのびながらご覧になる方もいらっしゃるでしょうし、今のお子さんがこの番組を見て、どう感じられるのかも楽しみです。
Eテレタイムマシン「ハッチポッチステーション」
【放送予定】
毎週金曜[Eテレ]午後4:10〜
再毎週月曜[Eテレ]午後3:30〜