これまでの街歩き

サンパウロ/ ブラジル

2015年5月5日(火) 初回放送

語り:松田洋治

撮影時期:2015年3月

街の「雑踏の中の帽子屋さん」

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 圧倒されるほどの人波が押し寄せる場所、3月25日通りです。通常の店舗はもちろん、道のあらゆるところに露天商から立ち売りの売り子が、雑貨、衣類、食品、電化製品などを掛け声とともに売っています。通りにはヨーロッパ系、アジア系、アフリカ系と、さまざまな顔つきの人が行き交います。
 そこに、パラソルを立てて日陰を作り、悠然と新聞を読む帽子屋さんと出会いました。彼によると、「ここは何でも安く手に入る庶民の買い物天国」だとか。人種の多様さについて尋ねてみると、「よその国の様々な文化を学べるんだ。それは良いことじゃないかな」との答え。そんな帽子屋さんのルーツは「ポルトガル系とイタリア系とアフリカ系とスペイン系だよ」と、笑顔で話してくれました。パウリスタ(サンパウロの人々)のルーツは多種多様です。

街の「日系移民1世の占い師」

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 セントロの南、通りのお店の看板に日本語が目につくようになりました。ここ東洋人街は多くの日系人が集まる地区、その一角で、「人生鑑定」などと貼り紙をし、巨人軍の帽子をかぶった、男性が座っていました。80歳の路上占い師です。手相、人相、生年月日の3つで占いを行い、ポルトガル語と日本語が可、とのこと。
 長生きで健康の秘密は食事だとか。お昼のお弁当を見せてもらうと、なんとそれはご飯の代わりにパンを使ったのり巻でした。お米だと、重たくて、胃がもたれるんだそうです。ブラジルに移民したのは1960年。最初の頃は月明かりを頼りに朝の3時から夜の10時まで畑で働いていいたそうです。そんな彼の人生は、「波乱万丈。」だそうです。

街の「自転車図書館」

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 目の前を横切る、自転車に乗せられた赤いタンスのような箱。興味深々で着いて行くと・・・赤箱の中にはぎっしりと並んだ本!これは私設の自転車図書館で、毎日、場所を変えて開館しています。2011年開設。もちろん無料で、身分証不要で貸し出しています。身分証がなく、一般の図書館を利用できない路上生活者向けのボランティア活動だとか。
 自転車を引く彼も、実は元ホームレス。サンパウロに初めて上京した時に強盗に会い、全財産を失い、ホームレスへ転落。人生に絶望し、麻薬中毒にもなりましたが、市役所の職員の勧めで保護施設に入ります。そこで、一冊の本と出会ったのが大きな転機となりました。人生の再建を決意し、NGOを立ち上げ、支援を募り、自転車図書館開設に至ったのです。
 自転車図書館は、今日もサンパウロの街角で、本を通して人々に希望を与えています。

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