2016年4月5日(火) 初回放送
語り:羽田美智子
撮影時期:2016年2月
バスティアの街の起源である要塞都市で、バケツと棒を持った男性に出会いました。そんなものを持ってどこへ?尋ねると、かつて砦(とりで)の火薬庫だったという場所へ案内してくれます。
中には、男性が育った山村の生活を再現したジオラマが!昔ながらの水車小屋、羊飼い、大工さんなど、精巧な仕掛けによって息を吹き返した古き良きコルシカ島の世界には、思わず息を飲みます。この壮大なジオラマ、男性がたった一人で30年かけて作り上げたのだとか。
男性によると、コルシカ人のいにしえの生活は海辺でなく山にあったそう。今より生活は不便ではあったものの、多くの幸せを感じることができたそう。コルシカの原風景とも呼ぶべき山村の生活が消えるなか、ジオラマでその世界を残したいと話してくれました。
中世のおもむきたっぷりの路地を抜けると、小さな空き地で年配の男性たちが鉄球を投げる競技に熱中していました。赤いボールの目印に鉄球を一番近づけたら点数の入る“ペタンク”という競技です。フランス発祥の遊びで、1907年に考案されたとか。しかし、男性陣だけで、異様な熱の入り方。女性はペタンクをしないかと尋ねると、「女性は我慢できない」というお返事。あらら?
どうやら、このペタンク、男の世界を守り抜きたい“男たちの競技”のよう。ペタンクに興じるのは年配の男性が多く、女性はお仲間に入れないようにするのが伝統のよう。毎日、バスティアの街角では、男性限定のグループが、妻を家庭に残して、鉄球投げに熱を上げているようです。
夜の街を歩いていると、男性たちの歌声が響き渡っていました。歌声が聞こえる教会をのぞいてみると、4人の男性が歌の練習をしていました。歌っていたのは“ポリフォニー”と呼ばれる伝統音楽。起源は古すぎてわからないとか。驚いたことに楽譜がありません。なんと太古から口伝えで受け継がれているものなんだそう。
教会で歌うときには神を敬う歌を、居酒屋や祭りでは生活に関係した陽気な歌を歌うそうです。男性合唱が正統だそうですが、まれに女性が歌う場合もあるそうです。
一説によると、コルシカの人々が山村の生活を送っていたころの牧童の掛け声が始まりで、のちに歌のようになり、ポリフォニーに発展したそうです。