アル・パチーノの魅力漂う、クライムアクションの傑作

カリートの道【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

11月28日(火)[BSプレミアム]午後1:00〜3:25

今回ご紹介するのは名優アル・パチーノ主演のクライムアクション大作です。

1970年代のニューヨーク。かつて、プエルトリコ系の大物ギャングだったカリートは弁護士デイブの力で、30年の刑期を5年で終えて出所しました。昔の恋人であるゲイルと再会したカリートは、ディスコを経営しながら、まっとうにゲイルと暮らそうとします。しかし、かつてのしがらみから再び抗争に巻き込まれていき…。

何といっても魅力的なのはカリートを演じるアル・パチーノの熱演。過去のしがらみを捨てきれない男の悲哀やゲイルへの純愛を繊細に表現し、アクション場面では迫力の演技を見せます。1940年生まれ、名門アクターズ・スタジオで演技を学んだパチーノは「ゴッドファーザー」(1972)で注目され、アカデミー賞に9回ノミネート。「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」(1992)で主演男優賞を受賞し、80歳を過ぎた今も精力的に活躍しています。
共演者も魅力的です。強烈なのがデイブを演じるショーン・ペン。髪型をガラリと変えて体重を増やし、それまでとは全く違った外見を作りあげ、人生を踏み外してしまう弁護士を演じ切っています。

監督はブライアン・デ・パルマ。さまざまな技法を駆使して映像で物語を語るスタイリッシュな演出で知られ、多くの映画作家からリスペクトされています。本作でも、冒頭からアクロバティックな映像でカリートの心象を描き、クライマックスでは10分にもわたってほぼセリフなし。縦横無尽なカメラワークと編集、効果音と音楽で、追跡と銃撃戦を演出しています。

映像と物語をさらに盛り上げるのが音楽。イギリス出身のパトリック・ドイルが切なくも美しいピアノや緊張感あふれるオーケストラで、登場人物の感情の高まりを表現しています。さらにディスコ音楽やサルサ。カリートがディスコを経営しているとあって、さまざまなダンスチューンが使われています。
音楽スーパーバイザーはプエルトリコ系のジェリービーン・ベニテス。70年代からディスコ/クラブ DJとして活躍し、80年代にはマドンナをはじめ、デビッド・ボウイ、ポール・マッカートニーなどさまざまなアーティストのダンス・リミックス版のプロデュースを行いました。マーク・アンソニーやエクトル・ラボーのサルサ、オージェイズやBTエクスプレスなどのディスコ曲、時代の雰囲気や民族性も表現したベニテスの選曲にもどうぞご注目ください。

映画ならではの興奮を満喫いただける傑作。じっくりお楽しみください。

プレミアムシネマ「カリートの道」

11月28日(火)[BSプレミアム]午後1:00〜3:25


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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