新年もプレミアムシネマで映画三昧!

1月のオススメ作品【渡辺祥子のシネマ温故知新】

ハリウッド映画史に名を残すセシル・B・デミル監督が1923年に旧約聖書の「出エジプト記」を原作に映画化したのが「十戒」だ。それをもとに1956年に、チャールトン・ヘストンがモーゼ、エジプト王子ラムセスをユル・ブリンナーが演じ、デミル自身が監督して再映画化した作品が、今回放送される「十戒」。

プレミアムシネマ「十戒」

1月2日(火)[BS]午前8:00〜11:41

この作品が誕生したころは、ハリウッドがテレビに打ち勝つために次々と大作映画の製作に乗り出していた時代だった。この年(1956年)の第29回アカデミー賞の作品賞候補は手堅い小品だった「友情ある説得」を除けば、「80日間世界一周」「ジャイアンツ」「王様と私」「十戒」と大作ぞろい。作品賞のオスカー像を手にしたのは「80日間世界一周」の製作者マイケル・トッドだった。受賞を逃した「十戒」でラムセスを演じていたブリンナーは、彼自身の主演作「王様と私」で主演男優賞を受賞。このときすでに亡くなっていたジェームズ・ディーンは「ジャイアンツ」で主演男優賞候補だったが、前年の「エデンの東」(1955)と同様、受賞はしなかった。

「十戒」は大作だけにエキストラも多く、テレビ・シリーズの大スターたちも出演。後に「0011ナポレオン・ソロ」に主演したロバート・ボーン、「タイトロープ」の主演マイク・コナーズ、「ララミー牧場」の主演ロバート・フラーなどがいた。
チャールトン・ヘストンのモーゼが民衆を引き連れてエジプトから脱出する際、紅海が割れて脱出に成功するシーンはあまりにも有名だ。

プレミアムシネマ「ボヘミアン・ラプソディ」

1月21日(日)[BS]午前0:00〜2:16 ※土曜深夜

1991年に45歳で世を去った“クイーン”のフレディ・マーキュリーをラミ・マレックが演じてアカデミー主演男優賞を受賞した「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)。20世紀最大のチャリティー・コンサートと言われた“ライブ・エイド”のシーンが見もの。エジプト系アメリカ人のマレックは「ナイト ミュージアム」(2006)のエジプト王アクメンラー役で映画デビュー。それ以前にテレビ・シリーズの「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」の天才ハッカー役で知られていた。最近の彼は、日本でも昨年から話題になりながらも、原爆に関係する話ということで公開が遅れた「オッペンハイマー」(2023)に出演している。

「ボヘミアン・ラプソディ」は、監督の名がブライアン・シンガーとクレジットされているが、彼は途中で降板。「サンシャイン 歌声が響く街」(2013)「イーグル・ジャンプ」(2016)のデクスター・フレッチャーが残りの部分を撮影して完成させている。日本でも2018年に公開されて、130億円を超える大ヒットを記録した。

プレミアムシネマ「コーダ あいのうた」

1月27日(土)[BS]午後10:20〜翌前0:12

続いては、こちらも音楽映画、「コーダ あいのうた」(2021)は、フランス映画「エール!」(2014)のアメリカ版リメイク作。映画の原題「CODA」は「Children of Deaf Adults」の略で「聞こえない親をもつ聴者の子ども」の意味。フランス版では耳の聞こえない両親を健常者の俳優が演じたが、アメリカ版の監督シアン・ヘダーは実際に耳が聞こえない俳優たちを起用することにこだわった。母親役は「愛は静けさの中に」(1986)でアカデミー主演女優賞を受賞したマーリー・マトリン。父親役を演じたトロイ・コッツァーはこの役でアカデミー助演男優賞を受賞した。

今月もまた変化に富んだ作品の数々をお楽しみに!


渡辺祥子

【コラム執筆者】
渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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