これまでの街歩き

フラメンコの都
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ/ スペイン

2016年4月12日(火) 初回放送

語り:八嶋智人

撮影時期:2016年2月

街の「シェリー酒蔵」

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 大通りを歩いて行くと、巨大な三角屋根の建物が現れました。窓には鉄格子。中には無数の樽(たる)が積み重ねられています。作業中のおじさんに話を聞くと、ここはシェリー酒蔵。1800年代初めから続く酒蔵で、5000樽のシェリーが熟成の真っ最中なんだとか。
 シェリーは、地元では「ヘレス・ワイン」と呼ばれています。普通のワインはボトルで熟成を重ねますが、シェリーは樽で熟成させ、この土地特有の酵母「ワインの花」の作用で独特の酸味と風味が生み出されるそうです。シェリーは、この街で「家庭にはなくてはならない飲み物」となっています。
 ちなみにその効用は「明るいアンダルシアの人々を、もっと“いい感じ”にする」そうです。

街の「のみの市」

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 旧市街を見下ろすように建っている城塞、アルカサル。12世紀に、この地を支配していたイスラム教徒が建てたお城で、この街最古の建物です。歩いて行くと、その城壁の下で、たくさんの人々が集まっています。のみの市です。
 売っているのは、本に電源コード、三脚、工具、野菜など。中には、どう見てもガラクタとしか思えないものまで。
 店のおじさんに突然呼び止められ、息子の歌を聞いて行けとのこと。17歳の息子さん、その場にいた自分の彼女さんに向かって、「黒髪の少女よ!僕の情熱を呼び起こす」と、手拍子と共に歌い始めました。これって、即興のフラメンコ?彼女さん、照れながらも、「今までより、もっと彼のこと好きになっちゃった」ですって。
 この街では、愛を語るのも、フラメンコなんですね。ごちそうさまでした。

街の「フラメンコ一家」

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 静かな住宅街を歩いていると、どこからか、音楽が聞こえて来ます。辺りを見回すと、開いた扉の向こうに、おしゃれなパティオがあり、何人かの方々が、歌に踊りにギターを楽しんでいます。
 誘われるままに お邪魔すると、全員ご家族で昼食後の一家団らんの最中。聞けば、毎日、お昼のあとは、みんなで集まってフラメンコなんだそう。一家の中心は74歳のおばあちゃん。すてきな踊りを披露してくれました。
 誰にフラメンコを習ったの?と尋ねると、「誰からも 誰からも」と歌でお返事。ヘレスの人々は、日々の暮らしからこみ上げてくる感情を、歌や踊りで表現するのだそう。そうすると心が落ち着くんだとか。だから、どんなに辛くて悲しいときでも歌うんだと教えてくれました。
 74歳のおばあちゃん、きっと74年間、いろんな思いのこもった歌を歌い続けてきたんでしょうね。

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