世界ふれあい街歩き

場所

　マーストリヒトはオランダ南部、ドイツとベルギーの国境に接したリンブルフ州の州都です。オランダ最古の都市でもあり、歴史は紀元前にまでさかのぼります。ローマ人によって作られたこの街は、19世紀にオランダの都市となるまでに20回も統治国が変わっています。その影響から各国の生活様式を吸収し、北のアムステルダムなど他の街とは違った独自の文化が出来上がりました。街のシンボルとなっている街の城壁も、元をたどれば1229年に戦乱から街を守るためにつくられたもの。
　過酷な歴史が生み出したマーストリヒト文化は、現在は独自の美食とファッションで世界中の観光客をとりこにしています。複雑な歴史と立地が織り成したバラエティーあふれる街です。

波乱万丈の歴史を持つ街

　観光ガイドのケティ・ファン・デ・ボスさんが波乱に満ちたマーストリヒトの歴史を紹介。
　マーストリヒトの歴史はオランダで最も古く、紀元前にローマ人がつくった街とされています。中世、この街は立地の良さから、波乱の歴史を送ることとなります。街のほとりを流れるマース川は、複数の国にまたがって流れる大きな川であり水運の要でした。そのため、マース川を活用できるマーストリヒトは「ヨーロッパの十字路」と呼ばれ、その利便性を求めた近隣諸国から、何度も侵略を受けてきたのです。その激しさは過去20回も統治国が変わったほど。オランダの都市として平穏を得たのは19世紀のことでした。
　この街が再び歴史の舞台に上がったのは1992年のこと。それは、かつて侵略を受けつづけてきた街だからこその出来事でした。EU創設の条約調印の地に選ばれたのです。
　今を大切に生きるマーストリヒトの人々の気質は、常に戦乱と隣り合わせだった波乱万丈の歴史があったからこそなのです。

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介！

マーストリヒトは美食の街としても有名です。今回グルメを紹介してくれるのは、巨人祭りギルドのバスティアン・クロンプさんとローラム・ニフェル・ヘルトさん。2人で仲良く街の伝統料理を紹介してくれます。

フラーイ

リンブルフ州名産のパン屋さんが焼くフルーツタルトです。パン生地にリンゴやチェリー、いちご、プラムなど季節のフルーツをふんだんに乗せて焼き上げます。マーストリヒトの人は朝ごはんに、デザートにとにかく毎日食べます。街のどのパン屋さんでも焼いているので、食べ比べて自分の好きな店を見つけるのも楽しみ方のひとつ。これを食べればあなたも立派なマーストリヒト市民！？

ズール・フレイス

リンブルフ州の伝統料理です。ズール・フレイスとは「酸っぱい肉」という意味。その名の通り、たっぷりのお酢を使って煮込みます。肉は馬肉を使うのが伝統的ですが、最近では牛肉で作るレストランも多いそう。そのまま食べるのもいいけど、付け合わせの定番であるポテトと一緒にどうぞ。これを食べない限り、マーストリヒトに来たとは言えません！

アスパラガスのコロッケ

マーストリヒトのあるリンブルグ州名産のホワイトアスパラガスが食べられるのは毎年5月から6月中頃と、とても限られています。そんなアスパラガスを贅沢に使ったコロッケです。レストランでも大人気の定番メニューなので、春から初夏に旅行するなら、抑えておきたい一品です。忘れられぬ思い出になること間違いなし！

街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます！

国境だらけの街　バールレ・ナッソー

語り：つぶやきシロー

　マーストリヒトからバールレ・ナッソーまでは列車とバスを乗り継いで2時間ほど。オランダ国内にベルギー飛び地があって、更にベルギー飛び地の中にオランダ飛び地があって・・・とジグソーパズルみたいな国境だらけの街を目指します。
　道で出会ったベルギーのおまわりさんに話を聞くと、国境は足元に書かれた十字のマークで示されているですって。ほんの一歩踏み出すだけで隣国に海外旅行が出来ちゃうんですね。
　さらに街を歩くと、ベルギーのガソリンスタンドにオランダの車が行列を作っています。なんでもベルギーのガソリン代の方が安いんだとか。この街らしい節約術です。
　最後に訪れた場所は街の議会場。この街のことは2つの国で話し合って決めるんです。ところがいざ議会場に入ってみると、議論しているのは全員子ども。皆に話を聞くと、2つの国は友達同士、国境のことなんて全くに気にならないんだとか。子どものころから、思えるなんてすてきです。でも、サッカーのことになると話は別みたい。なんでも同じというわけにはいかないのですね。