これまでの街歩き

同里/ 中国

2008年11月6日(木) 初回放送

語り:林 隆三

撮影時期:2008年5月

世界地図

地図

場所

同里は長江の南、江南地方に属します。近くには北京と杭州を結ぶ「京杭運河」があり、昔から水運が盛んで、穀物などの取引が活発に行われていました。また「太湖」と呼ばれる湖をはじめ周辺には5つの湖があり、水郷の街として栄えました。同里の旧称は「富土」というほど、富める土地だったのです。しかし、唐代にその名が過分であるとして改められたといいます。
美しい水郷の風景は多くの観光客をひきつけるばかりか、映画、テレビの撮影地としても人気があり、これまで撮影された映画は100本以上にものぼります。また中国各地から画家が訪れ風景をスケッチする姿を見かけます。同里の街は「建築の博物館」といわれ、有名な庭園もあります。その一つである「退思園」(たいしえん)は世界文化遺産に登録されています。

Information

橋にこめた願い

同里の街には15本の水路が流れ、49もの橋が架かっています。橋は、街の美しい景観として、島と島を結ぶ道として住民から愛されてきました。そのため、それぞれの橋には様々な願いが込められています。例えば、「読書の橋」と呼ばれる橋。橋の柱には「月に照らされて橋の影が映り、橋の両側で読書の声が聞こえてくる」という詩が刻まれています。つまり読書の橋には、勉学に励むようにという願いが込められているのです。
同里でもっとも有名な橋は「三橋」と呼ばれ、幸せを願う「吉利橋」、平和を願う「太平橋」、長寿を願う「長慶橋」です。この3つの橋は3本の水路の合流点にあり、街の人は生後1ヶ月のとき、結婚のとき、66歳の誕生日に、それぞれの願いを込めて3つの橋を渡ります。

名物のお菓子

食物が豊富な同里は、おいしいお菓子の名所として知られています。水郷の街ならではのお菓子が「チェンシー餅(もち)」。このお菓子には特産のオニバス(ハスの一種)の実が入っています。オニバスの実は「水中の朝鮮人参」と言われるくらい滋養があり、健康食としても人気があります。また、「靴底パイ」は、靴の底に似ている形から名づけられました。このお菓子はもともと甘い味だったのですが、今は塩味です。
そうなったのには、ある逸話があります。昔、甘い靴底パイが大好きなお嫁さんがいましたが、あるときお姑さんが意地悪をしてパイに塩を入れたのです。ところが、それを食べたお嫁さんは「おいしい!」。塩味パイは街中の評判になり、以来靴底パイは塩味になったそうな。

迷路のような?通路

同里には薄暗い通路が多く見られます。実はこの通路、かつての富豪の邸宅の一部なんです。現在は博物館として残されている大邸宅を見てみましょう。この邸宅は、いくつもの部屋が縦に並び、一番奥の部屋までは100mにもなります。そのため邸宅には正面玄関の他、脇(わき)に使用人が使う通路があり、この通路から各部屋に通じる扉があります。使用人たちは通路から部屋に入り食事などを運んだというわけです。
戦後このような大邸宅は国有化されて、数世帯に割り当てとなりました。かつての1部屋ごとに1世帯が住んだため、部屋の扉は玄関、使用人の通路は表通りとなったのです。こうした通路は、この地方独特のもので「背弄(ベロン)」と呼ばれています。同里には背弄がたくさん残されているので、探索してみるのも街歩きの楽しみの一つです。

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