これまでの街歩き

イタリアとっておきⅢ
プロチダ/ イタリア

2011年1月23日(日) 初回放送

語り:牧瀬里穂

撮影時期:2010年11月

世界地図

地図

場所

イタリア半島南西部。人口はおよそ1万。ナポリ湾の入口にポツリと浮かぶプロチダ島は、広さ3.7平方キロメートルほどの小さな島です。ナポリから船でわずか1時間ですが、伝統的な漁師街の風情と暮らしが残っています。漁業が盛んなほか、オレンジ、レモン、栗など、豊富な農作物が収穫されます。
プロチダは17世紀、ナポリ王国に統治される以前は、海からの外敵の侵略に幾度も脅かされました。密集した家並みは、敵から島を守るための構造だったそうです。今では人も犬も猫ものんびり暮らす、平和そのものの街。
また、パステルカラーの建物が並ぶ海岸コッリチェッラは、1994年に製作されたイタリア映画「イル・ポスティーノ」の舞台。映画の公開によって、この島の美しい街並みと素朴な人柄が世界の注目を集めました。

Information

サン・ミケーレ

高い断がいにそびえるように建つのがサン・ミケーレ修道院。11世紀に造られ、その後、何度も改築されてきました。“サン・ミケーレ”は、キリスト教の中でもっとも重要な天使の一人。大天使・聖ミカエルの名でも知られています。言い伝えでは、16世紀に島が襲撃された時、天の軍団を引き連れたサン・ミケーレが空から降りてきて、雷と炎で家々を囲み島を守ったとされています。以来、プロチダの守護聖人としてあがめられてきました。修道院の内部には、嵐で遭難しながら助かった漁師さんや、ペストなどの病気から回復した人々がサン・ミケーレへの御礼として納めた奉納画が飾られていました。街の道には、あちこちにサン・ミケーレ像が置かれ、花が供えられてあり、いつもきれいです。街の人々にとって、いかに身近で愛されているのかがよく分かります。

グラツィエッラ

プロチダの娘、グラツィエッラは19世紀のフランス人作家の自伝的小説に登場するヒロイン。ある作家が冒険に出るも、嵐にあい、プロチダに流れ着きました。介抱してくれた漁師の家で、グラツィエッラという美しい娘と恋に落ちます。しかし、作家は心配する母親のためにパリへ帰ってしまいます。「すぐ島に戻る」と約束しましたが、待てど暮らせど戻りません。グラツィエッラは悲しみのあまり病に侵されます。やっと作家が戻ってきた時、彼女の家は荒れ果て誰もいなかった…という悲しい愛の物語です。
プロチダでは彼女のいちずな愛を忘れないよう、70年前から毎年、ミス・グラツィエッラコンテストを行っています。コンテストの選考基準は、美人というだけでなく、絹に金糸の刺しゅうが施されたプロチダの伝統衣装が似合うこと。今年のミス・グラツィエッラの栄冠は17歳の学生さんに輝きました。

溺(おぼ)れダコ

プロチダの代表的な家庭料理「溺れダコ」。鍋の中で、タコが溺れているように見えるところから、この名前がつきました。レシピはいたってシンプルです。土鍋にオリーブオイルとニンニクを入れて熱し、タコをまるごと入れていためた後、水を加えずに白ワイン、ミニトマトとタコから出る水分だけで煮込むこと40分。タコに香りが染み込んでおいしく仕上がります。
プロチダ料理の売りは素材の鮮度です。タコは素潜りでとれますし、多くの家では菜園を持っていて、材料のにんにく、トマトとイタリアンパセリは庭でとれ、香り出しの白ワインも自家製のものを使います。タコがとれるポイントは島のまわり中にありますが漁師さんの“企業秘密”だそうです。

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