これまでの街歩き

ロマンチック街道の都
アウクスブルク/ ドイツ

2016年7月5日(火) 初回放送

語り:工藤夕貴

撮影時期:2016年4月

世界地図

地図

場所

 ドイツの南に位置するバイエルン州のアウクスブルク。紀元前15年に初代ローマ皇帝アウグストゥスが駐留地として開き、街がここに築かれました。そもそもローマに通じる交通の要衝として開かれたアウクスブルクは、中世になると商業都市へと発展します。経済を拡大させた市民たちは、それまで教会や領主の下に置かれていた暮らしから脱却し、自治・自衛などを自ら行う「帝国自由都市」を勝ち取ります。
 そんなアウクスブルクが最も繁栄の時代を迎えたのはフッガーなど大商人が台頭した16世紀頃。この時代には名だたる芸術家によってドイツルネサンス様式の建造物や彫刻が施された噴水などが数多くつくられました。
 現在バイエルン州で3番目に大きな都市として26万の人びとが暮らすアウクスブルク。こうしたアウクスブルクの歴史を知ることができる美術館や博物館は15か所、教会や噴水など重要な建造物は40か所以上と、見応え十分の街なのです。

Information

大商人が残したもの

 アウクスブルクを大都市に発展させた陰の立役者的な存在として、いまも街の人びとが認める商人ヤーコブ・フッガー。代々織物職人の家に生まれ育ったフッガーは、その後商人として大活躍を遂げました。祖父たちが作りだした独特の布バルヘントを交易品として商売を成功させたフッガーは近隣諸国の金や銀山を手に入れ、細工職人たちに見事な装飾品をつくらせます。品々は世界の富豪に買われ、更に富を得ていくことになりました。こうして大富豪となったフッガーの名はヨーロッパ中にとどろいたといわれています。
 そんな彼が残した最大の功績を街の中で見ることが出来ます。世界最古の社会福祉住宅フッゲライです。「貧しくても全ての人びとが自立した暮らしを約束されるべきだ」という考えから造られたフッゲライには、いまも140の家に人びとが暮らしています。家賃は500年前のまま据え置き、およそ100円というから驚くばかり。美しい街並みも、水路のある暮らしも、歴史が語られる噴水も、その資金の一部はフッガーから出されているという話し。正にアウクスブルクにフッガーあり…なのです。

食べ歩きグルメ

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!

 今回グルメを紹介するのは、地元で子供たちに大人気のアウクスブルク人形劇団で活躍する人形と人形師。ドイツ中の子供たちをテレビ釘づけにしてしまうほどの人気ぶりを誇る「ピンパネル」は料理好きなキャラクター。
 そのピンパネルを連れて、人形師がグルメを案内して回ります。2人の楽しく小気味のいい会話に御注目!

モーツァルトのキス

アウクスブルクはモーツァルトの先祖が暮らした街としても有名。彼自身、幼少期には何度も訪れた街であったということから生まれたのが今回紹介するチョコレート・ボンボン。人気の理由はモーツァルトの恋の味を堪能できるから。実はモーツァルトの初恋の相手はアウクスブルクで暮らしていた従妹のベーズレーだったのです。初恋、そして失恋…と切ない恋の味を、特産の果実とリキュールで表現した味わい深い一品なんです。

サラミプレッツェル

ドイツ名物プレッツェルと姿形はそっくりそのままに、サラミで作っちゃったというサラミプレッツェル。一口サイズなので塩気も程よいと地元では評判の一品です。市場のお肉屋さんで気軽に買うことができるので、ちょっと小腹が空いた時や、甘いものを食べた後、そしてやっぱりビールのおつまみにも最高…と、地元では登場する場面が限りなく多いと評判なんです。

アラーバー

メインストリートにある老舗のケーキ屋さんからランクイン。スポンジケーキ全体に真っ白なホイップクリームを施したアラーバーは街の女性たちに根強い人気があるケーキ。その理由は、アウクスブルクに実在した悲劇のヒロイン、アグネスベルナウアーをイメージして作られたものだから。これを食べれば、美しい女性になれること間違いなし。

ちょっとより道

街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます!

天使が飛ぶ…ドイツで一番美しい教会
語り:温水洋一

 今回はアウクスブルクから南へ150キロ、電車とバスを乗り継いでシュタインガーデンへ。ロマンチック街道から少し入ったところにあるシュタインガーデンは人口わずか3000ほどの小さな村。そこに年間100万人の観光客が訪れるという、ドイツで一番美しい、天使が飛ぶ教会があると聞いて訪ねてみました。
 バスを降り立つと…観光地とは思えないほど人気がありません。静まり返った村を歩いていると、とってもユニークな木彫りの人形を発見。思わずほほえんでしまうほどかわいらしい人形ばかり。そこにいた村人に声を掛けてみると、人形を作っている本人で、村の素朴な暮らしを楽しみながら作っているんだといいます。天使が飛ぶ教会も、素朴な暮らしを営んできた村の人たちの大切な宝物なのだと教えてくれました。
 村はずれまで歩いてたどり着いた教会は、これが一番美しい教会なのか?と思わず疑ってしまうほど素朴で質素な見た目。少し不安になりながら中に一歩足を踏み入れた瞬間、その美しさに言葉を失ってしまいました。天井いっぱいに描かれたフレスコ画は圧巻。数えきれないほどの天使が一面に舞っていて、至るところに天使の彫刻も。小さな村で300年もの間守られてきた教会の見事さに感動しながら、村人の心の美しさに触れたような気がしました。

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