2016年9月27日(火) 初回放送
語り:中嶋朋子
撮影時期:2016年6月
ブルガリアの首都ソフィアは国土の西の端に位置し、ヴィトシャ山のふもとにひろがる人口約130万の高原都市です。バルカン半島のほぼ真ん中にあたり、アドリア海と黒海を結ぶルートと、中近東と西ヨーロッパを結ぶルートの交差点として古代から交易で栄えました。
ヨーロッパ最古の街のひとつで、温泉に魅せられたトラキアのセルディ族が紀元前8世紀頃にこの地に住み着いたのが街の始まりといわれています。トラキアをはじめ、ギリシャ、ローマ、ビザンチン、オスマントルコなど、さまざまな民族、国家に支配されてきました。街なかにはローマ時代の遺跡をはじめ、ブルガリア正教の教会、イスラム教のモスク、ユダヤ教のシナゴーグなどが建ち並び、この街がたどった歴史を物語っています。
ソフィアの街の真ん中に残る遺跡や建造物から、「文明の十字路」ソフィアがたどった歴史をご紹介します。
「セルディカの遺跡」では、4世紀から5世紀頃のもので、住居や浴場、温泉を巡らせていた配管の跡などが見られます。温泉が大好きだったローマ皇帝コンスタンティヌス1世はこの街を「わがローマ」とよぶほど愛していました。
時代は変わって14世紀。オスマン帝国の支配下で造られた「聖ペトカ・サマルジースカ教会」は地下に半分埋もれるように建てられています。当時、馬に乗った人間よりも高い屋根の教会を建てることは禁じられていたのです。
教会の後ろには「旧共産党本部」の建物。ブルガリアは第二次世界大戦後から1989年までソビエト連邦の影響下にありました。街の歴史を物語るこれらの建造物は聖ネデリャ広場近くから一望できます。
街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!
ソフィア出身のレストラン・シェフ、ゲオルギ・ディミトロフさん。彼が新感覚ブルガリア料理をつくるときにヒントにしている伝統料理を紹介してくれます。
ムサカ
ひき肉、じゃがいもなどを重ねてオーブンで焼いたもの。ギリシャにも同じ名前の料理がありますが、ブルガリアのムサカはいちばん上にヨーグルトと卵を混ぜたものをかけて焼き上げます。ホワイトソースより軽いからたくさん食べられるんです。さらにヨーグルトをたっぷり上にかけて食べると、肉との組み合わせが絶妙なんです!
タラトール
ヨーグルトの冷製スープ。ブルガリアヨーグルトのおいしさを味わうにはこれが一番です。ヨーグルトにキュウリ、ディル、オイル、にんにくなどを入れ、水を加えて混ぜあわせ、砕いたクルミをトッピング。食べる時はグラスかボウル、好きな方を選んでください。口の中いっぱいに爽やかさが広がります。
バニツァ
薄いパイ生地でヨーグルトとチーズをくるんで焼いたもの。いろいろな形がありますが、ソフィアでは渦巻き状になっている大型のものが有名です。ブルガリア人の朝はこれがないと始まりません!バニツァに欠かせないのは、塩味のヨーグルト・ドリンク「アイリャン」。口の中がさっぱりしますよ。
街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます!
ブルガリアは温泉大国。源泉の数は1600を超えます。その中でもいちばん有名な温泉地がヴェリングラッド。ソフィアからバスで2時間、山のふもとにあります。素朴な田舎町で、温泉地というより高原リゾートといった おもむきです。
まずは名湯「クレムチュナ」へ。ここは1751年に建てられた歴史ある浴場。中へ入ると、ドーム状の天井のてっぺんが開いていて、日光が差し込んでいます。気持ちよさそうに顔を洗っていたおじさんに聞くと、ここはオスマン帝国が造ったお風呂なんだそう。たしかに造りがトルコっぽい。
浴場を出て散策していると、道端の蛇口から出る温泉で卵やじゃがいもをゆでている方に会いました。温泉の温度が84度もあるので、ちゃんとゆで上がるのだそうです。
街の外れにある洗濯場では温泉を使って洗ったじゅうたんや毛布を、湧き水が流れ込む巨大な“洗濯機”で豪快にすすいでいました。じゅうたんは、近隣の街やソフィアからも集まってくるのだそうです。温泉の有効利用ですね。