これまでの街歩き

アマルフィ/ イタリア

2009年6月4日(木) 初回放送

語り:松田洋治

撮影時期:2009年4月

街の「大聖堂」

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アマルフィの街のシンボルともいえるのが大聖堂、ドゥオモです。
壁面は白と黒のしま模様で、随所にモザイクによる装飾が施されるなど、異国情緒たっぷり。かつてオリエントの諸国と交易を行っていた海洋共和国・アマルフィの栄華をしのぶことができます。ドゥオモは正式名称を聖アンドレア教会といい、十二使徒の一人である聖アンドレアをまつるため10世紀に建てられました。聖アンドレアは漁師だったことから、漁師の守護聖人とされています。アマルフィの漁師さんも、何百年にもわたりここで安全と豊漁を祈ってきたのでしょう。
聖堂の左手には12世紀に建立された鐘楼(しょうろう)がそびえています。黄色と緑の鮮やかなマジョルカ・タイルで飾られた最上部、その下のアーチの構造などには、イスラム文化の影響が濃厚に感じられます。鐘は15分間隔で鳴らされ、今日も街の人たちに時を告げます。

街の「運び屋さん」

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狭い階段の途中で出会ったのは、70kgもある大きなテーブルを運んでいる男性でした。11歳のころから67歳の今日まで、荷運びの仕事を続けているそうです。おじさんの自慢は足の筋肉。トレーニングなどは一切せず、仕事で鍛え上げた足はまるで丸太のよう。そしてもうひとつの自慢は、どんな仕事もひとりでやり遂げること。アマルフィには他にもこの仕事をしている方がいるそうですが、だいたい2、3人でチームを組むことが多いんだとか。
おじさんは若い頃、大きなビリヤード台をひとりで運んだこともあるそうです。でも、この仕事は力さえあればいいというわけでもありません。仕事の依頼を受けたら、荷物の大きさに応じてどのルートなら通行可能かを瞬時に判断しなくてはならないのです。狭い路地が交差するアマルフィ。道幅や傾斜などあらゆることに精通していなければ、途中で荷物がつかえて引き返すなんてことにもなりかねません。
おじさんは「まあ、俺のレベルに達しているやつはひとりもいないね!」と胸を張っていました。

街の「郵便屋さん」

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アマルフィに配属された郵便配達夫は、まず道を覚えるのに苦労するそうです。また、狭い路地にはバイクも入れないため、歩いて家々を回るしかありません。
今回の旅で出会ったルチアーノさんは、街の西側斜面が担当エリアですが、毎日たっぷり4時間はかかるとのこと。階段や路地が複雑に入り組んでいるのは、平地が少ないということに加えて、よそ者の侵入を防ぐためでもあったとも考えられています。つまりこの街はわざと歩きにくく造ってあるというわけです。そんな迷路のような街を回る配達夫の苦労をちょっとでも和らげようと、高層階の住人はヒモをつけたバケツやカゴを道までおろして郵便物を受け取ります。
一方、配達夫は仕事の合間に、階段で立ち往生している人の荷物を持ってあげたり、独り暮らしのお年寄りがどうしているかのぞきに行ったりしています。住人と配達夫は、まるで家族のよう。ルチアーノさんは「アマルフィの街は僕の家みたいなもんだよ」と言いました。

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