これまでの街歩き

スース/ チュニジア

2010年2月4日(木) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2009年11月

街の「社交場・粉ひき屋さん」

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商店街で買い物中のお兄さんに出会いました。話しかけると、この日買ったのは麦500グラム。どうやって料理に使うのかと尋ねると、粉ひき屋さんで粉にひいてもらうとのことでした。
お兄さんの案内で、旧市街のほぼ真ん中に位置する粉ひき屋さんを訪ねました。そこには年季の入った何台もの粉ひき機が並んでいます。それぞれひくものが決まっていて、麦、スパイス、砂糖、アーモンド…と分かれているのだそうです。何をひくかによって、細かく値段も決められています。はじめからお店で粉になったものを買えば手間はかからないけれど、ひきたての味や香りが重要なんだ、とお兄さんは言っていました。
粉ひき屋さんによれば、スースの人全員がやって来るそうです。中には粉をひかないで、ただおしゃべりをするためだけに来るお客さんもいるんだとか。お店でちょっとずつ買って、わざわざ何度も粉ひき屋さんに足を運ぶのは、味や香りのためだけでなく、そこが社交の場でもあるからだと教えてくれました。

街の「犠牲祭」

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街を歩いていると、なにやら動物を連れた子供たちが歩いてきます。よく見ると、首縄をつけたヒツジ。お散歩中なんだとか。実はこのヒツジ、間近にせまった犠牲祭というお祭りで、神様に“いけにえ”としてささげ、その後食べるために飼っているんだそうです。
イスラム教の古い暦で12月10日が犠牲祭にあたります。預言者アブラハムが息子をすすんで神にささげようとした故事にちなんで行われます。この時期、スースの街中はヒツジだらけ。あちらこちらから、メーメー、ベーベー聞こえてきます。しかしこのヒツジ、ただ自分たちで食べるだけではありません。その一部は、ヒツジを買うことのできなかった貧しい人々に分け与えることになっています。助け合いの精神がそこには根付いています。
かわいがってるヒツジを食べちゃうの?と、子供に聞いたら、さばく時には泣いちゃうこともあるそうです。でも、子供たちも犠牲祭の意味をちゃんと理解していて、かわいそうだけど、大事な儀式なんだと教えてくれました。

街の「機織り屋さん」

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大きな袋を持ったおばあちゃんに出会いました。中身は毛糸の束。おばあちゃんが自分でつむいだんだそうです。ついて行くと機織り屋さんにたどりつきました。掛け布団を織ってもらうんだとか。
おばあちゃんによると、昔はヒツジを飼っているお宅も多く、その毛を刈り、それを海に持っていって洗い、糸つむぎをして機織り屋さんに持っていって生地にしてもらうのがスースの伝統だったそうです。今ではそこまでする家庭はほとんどなくなったそうですが、機織り屋さんは残っていました。
機織りのおじいちゃんはこの道55年。引退するまでお客さんとのおしゃべりを楽しみながらこの仕事を続けたいと言っていました。ここにもおしゃべり好きなスースの人々の気質が表れています。

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