これまでの街歩き

上海・四川北路界わい/ 中国

2012年6月19日(火) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2012年4月

街の「お見合い情報交換所」

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 四川北路の北にある魯迅(ろじん)公園は、あの文学者・魯迅がこの辺りに住んでいたというゆかりの公園です。朝、太極拳やダンスなどをする人々でにぎわっています。公園の奥まで歩いていくと、なにやら人だかりが…。近寄ってみると、顔写真や履歴書のようなものがたくさん貼ってあって、名前・生年月日・勤め先・給料・出身地などがたくさん書いてあります。みなさん真剣に見たり、メモをとっています。
 女性の情報を熱心に見つめている初老の男性に伺うと、実はこれ、結婚の相手探しなんだそうです。「今の若い男女は仕事が忙しく、家に帰ってもパソコンをいじるだけで、出会いがない。だから、こうやって若い男女に出会いの場を作っているんだ。私の息子も28歳のサラリーマンだが一度も彼女ができたことがないんだ」とか。
 別の女性は、娘が上海の有名大学を出たのにまったく相手が見つからないそう。「娘の希望は、高身長・高学歴・高収入で、まったく譲らない。私はもう、つえをつかないと歩けなくなるほど歳をとってきたのに、どうすればいいの」と嘆いていました。
 周りを見ると、集まっているのは当の本人というより、親御さんたちばかり。どこの国でも、嫁探し婿探しは大変のようです。

街の「恋愛ポスト」

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 魯迅公園にほど近い通りの一角。そこに1つのポストが置かれています。でもそのポスト、普通のポストとは違うんです。そのポストの周りは、いつも若いカップルや女の子たちでいっぱい。
 実はこのポストから投かんすると、ハートマークの消印を押してもらえるんだそうです。今、若者の間では、このポストから意中の人に手紙を出すとその恋が成就するといううわさが広まっていて、2人連れの女の子もわざわざ広東省からここへ手紙を出しに来たんだそうです。そのうちの1人は「もしこの恋が実ったら、彼氏と一緒にここ(上海)に来て、きれいな写真をたくさん撮りたい」と言っていました。どんなことを書いたのかは秘密とのこと。でもきっと、甘~い言葉がたくさん書いてあったんでしょうね。だって、ここの通りの名前は甜愛路(甘い愛の通り)ですから。

街の「歴史を物語る集合住宅」

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 虹口地区とも呼ばれるここ四川北路界わいは、昔は日本人居留地区でした。そのため、今でもお寺の跡や日本人が建てた病院、学校など、当時の名残がある建物が少なくありません。特に住宅はそのまま使われているものが多く、外観は昔の日本式家屋の姿をとどめています。
 街歩きで見つけた古い集合住宅の前で、布団を干していたおばさんがお宅の中を見せてくれました。この建物は戦前、イギリス人が建て、1933年からは日本人が住んでいたそうです。戦後、おばさんのご主人の両親が購入して今に至るそうで、階段も電灯も暖炉も当時のまま。何不自由なく使っているそうです。唯一の変更点は、ベランダだった所を改装して屋根を付け、部屋にしたくらいだとか。
 なんでも、戦前ここに住んでいたという日本人が、2011年、66年ぶりに突然訪ねてきたそうです。そのときの写真を見せてくれました。おばさんは「はるばる訪ねて来た彼らに、できるだけのことをしてあげたい」と思ったそうです。

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