これまでの街歩き

マテーラ/ イタリア

2012年12月4日(火) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2012年10月

街の「土産物店と鍛冶屋」

Photo

 サッシに来てみたものの、人を全く見かけません。洞窟住居の中をのぞいてみても、誰も住んでいない様子。ここ、人がいるのかな…?と思いながら開けた通りに出ると、ようやく人影を発見!土産物店のご主人でした。
 店の中を案内してもらうと、昔のマテーラを復元したジオラマが。なんとご主人がたった一人で3年もかけて、石を削って作ったものなのだとか。重さは3.5トン!「幼いころの思い出の街の姿に戻ってほしくて、作ったんだ」と、誇らしげに話してくれました。
 その後、ご主人に連れられて友人の鍛冶屋さんのところへ。親子ほど歳の離れた2人の男性が溶接をしていました。作っていたのはサッシに引っ越してきた人の家具。サッシでは、洞窟によって住居の大きさが異なるため、家具はすべて特注なんだとか。
 「サッシは一度死んだ街だから、元気を取り戻してほしくて、ここに工房を構えたんだ」と言う鍛冶屋さん。サッシでの生活に今や欠かせない存在になっています。かつてのマテーラを思う人たちの心が、街に活気をもたらしているのかもしれませんね。

街の「観光客向けギャラリー」

Photo

 なだらかな坂を上っていると、何かの案内板のようなものを発見。さらに歩いて行くと、今度は裸の男性が描かれたポスターが壁に掛かっていました。壁の向こうにいる男性に話を聞くと、ここは観光客向けのギャラリーだと言います。ギャラリーは洞窟の中にあり、ここ数日間、アート展をやっているそうです。
 中に入ってみると、上からぶら下がっていたのは、なんと病院で使われる“しびん”!展示されているアート作品はこれを素材にして作ったものだとか。男性は「この街の再生に貢献したくてギャラリーを開いたんだ」と話してくれました。
 この男性が大好きだという場所へ案内してもらうために、洞窟の外へ。やがて見えてきたのは、サッシ全体のパノラマ!ここは、マテーラの街を見渡せる絶景ポイントです。「この街は貧しい人々の営みから生まれ、人々は貧しさの中で岩と調和して生きる関係を生み出した。それはこの上ない美学なんだ」と、サッシについて熱く語る男性。サッシは存在そのものがアートなんですね。
 岩だらけの土地で生きてきたマテーラの人たち。その営みの美しさを感じる出会いでした。

街の「ご近所同士のバーベキュー」

Photo

 日が傾いてきた、午後6時。狭いサッシの道を歩いていると、どこからか、にぎやかな声が…。声のする方へ歩いて行くと、肉を焼いている男性に遭遇。時々ご近所同士で集まって、食事をしているそうです。今日はバーベキューの日。今までサッシであまり人に会わなかったけれど、こんな風に大勢集まることもあるんですね。普段から砂糖や卵を貸し借りしたり、子ども同士のけんかで親までけんかしてしまったり、とっても仲がいいご近所さんです。
 話を聞いた若い女性はフランス人で、6年前に文化交流でマテーラに来てからその魅力に取りつかれ、世界中を旅した後でこの街へ戻ってきたのだとか。ここで今の旦那さんとも出会い、現在、妊娠中。学校も近くて安全な場所にあるため、子育てにはもってこいなのだと大喜びです。
 まだサッシには子どもが少ないそうですが、この後に生まれる子どもたちが、マテーラの街を元気にしてくれるのかもしれませんね。

※NHKサイトを離れます
ページトップ