これまでの街歩き

鎮遠/ 中国

2014年8月26日(火) 初回放送

語り:原田知世

撮影時期:2014年5月

街の「伝統建築」

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 鎮遠の旧市街には3階建ての石造りの伝統建築が並びます。山がすぐそばに迫っていて土地が少ないため、建物同士の壁がくっついている長屋形式。火事の時燃え広がるのを防ぐため、隣合う建物の間に壁が作られています。日本では「うだつ」と呼ばれる防火壁です。これは、安徽省など川下の地域から持ち込まれたもの。40年前に列車が通り、道路が整備されるまで主な交通手段は船だったため、川沿いの地域のさまざまな文化が持ち込まれたのです。
 伝統建築は今も店や住居に使われています。エアコンの室外機はミャオ族のスタイルの木枠で囲うなど、現代の生活に合わせながらも景観を保存する工夫がされています。

街の「井戸」

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 旧市街には明代からの古井戸が5つあります。炊事や洗濯に来る近所の人たちで今もにぎわい、文字通り井戸端会議が繰り広げられています。水道のなかった頃は、食事時にはバケツを持った人の行列が出来たそうです。井戸の前には土地の神様が祀(まつ)られています。人々は、生活の場のあちこちに神が宿っていると信じているのです。
 訪れた時に夫婦で洗濯していたおじさんは「ここの水は、冬は温かく夏は冷たい。沸かさなくても飲めるんだ」と教えてくれました。昼食に使う菜っ葉を洗いに来たお母さんについてきた少年は、学校をさぼったのを近所の人にすぐに見破られてしまいました。
 井戸は地元の人が集い、地域の絆が作られる大切な場にもなっています。

街の「伝統行事」

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 毎年端午の節句に、鎮遠では町内会対抗の竜船レースが行われます。数週間前になると、男たちが船をこぐ練習する姿が見られます。20~30人が細長い木造船に乗り込み、太鼓のリズムに合わせ川を何度も往復します。2~3人だけで漕いで特訓したり、模擬レースを行ったり工夫して練習にいそしむ様子を見物するのは楽しいもの。「賞金は出ないけど、活気がすごいから参加したくなるんだ」と通りで船を修理していた人が教えてくれました。さまざまな民族や地方出身者がレースを通して1つになることで寛容の精神が受け継がれて来たのです。
 5月、街には遠くまで太鼓の音が響き渡り、鎮遠の人はみなレースの日を心待ちにします。

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