これまでの街歩き

ソウル・テハンノ(大学路)界わい/ 韓国

2012年3月8日(木) 初回放送

語り:田畑智子

撮影時期:2012年1月

世界地図

地図

場所

 韓国の首都ソウル。高層ビルが建ち並ぶ大都会の真ん中に、ぽっかりと家並みの低い街が広がっています。かつてソウル大学があったことから、テハンノ(大学路)と呼ばれる一帯です。経済成長が著しいソウルにあって、ここには今も古い街並みが残っています。ソウル大学が移転したあと、1980年ごろから次々と劇場が生まれ、今やソウルでいちばん演劇が盛んな若者の街になっています。その一方、劇場が密集する劇場街の南東にある山の上の地区には、昔から変わらない古い家並みの街が残っていることも特徴です。

Information

テハンノの喫茶店

 ソウルではおしゃれなカフェやコーヒーショップが人気で、次々と新しいお店がオープンしています。そんな中、テハンノには昔ながらのレトロな雰囲気の喫茶店があります。お店がオープンしたのは、まだソウル大学がテハンノにあった1956年のこと。学生運動が盛んだった当時、お店は大学生たちが議論を戦わせる場であったと同時に、憩いの場でもありました。そうしたことから、「もうひとつの講義室」と呼ばれ、愛され続けてきたのです。お店の訪問録には、数多くの芸術家や政治家の名前が記されています。オープンした当初に出していたのはインスタントコーヒーでしたが、「せっかく雰囲気がいいのだから、おいしいコーヒーが飲みたい」というお客さんたちの要望を受け、豆を吟味し、挽き方やお湯の温度にまでこだわり、おいしいコーヒーを出すようになったといいます。

路上アート

 若者の街テハンノですが、少し山を登ったところに、お年寄りが多く暮らす古い地区があります。この地区とテハンノをアートの力で結ぼうとキョンヒ大学のイ・テホ教授は2006年、若い芸術家たちと路上アートのプロジェクトを立ち上げ、これまでにおよそ70点の作品を街に飾りました。今ではその作品群は“路上美術館”と呼ばれ、週末には多くの観光客が訪れるほどです。
 イ教授がこのプロジェクトで一番大切にしたのは、地元のお年寄りに参加してもらうことでした。初めは絵を描くことを嫌がっていたお年寄りですがやり始めると夢中になって描いてくれたといいます。そのとき参加してくれたお年寄りから「自分がきちんと写った写真を持っていない」という悩みを聞いたイ教授。絵を描いてくれたお礼として、正装した姿の写真を撮ってプレゼントして、大変喜ばれたといいます。こうして路上アートは、地区と地区だけでなく、そこに暮らす人たちの心をもつなげることとなりました。

役者食堂

 演劇の街テハンノならではの、役者たちが多く集まる食堂があります。店内の壁は演劇のポスターやパンフレットで埋め尽くされています。この店の人気の秘密は日替わりで役者たちに出される料理にあります。安いうえにおいしくてボリューム満点!店主のユン・ジンボンさんは役者を志したものの夢をかなえられなかった経験から、「若い役者たちが安心して腹いっぱい食べられるお店をつくりたい」と考えてこのお店を始めたそうです。
 おすすめのメニューは「チゲ焼き」。肉と野菜たっぷりで、なんとおよそ500円という安さ。辛い味付けで豚肉をしゃぶしゃぶにして、野菜を刻んだ特製サラダと一緒に食べるのが最高においしいと、役者たちに大人気です。

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