これまでの街歩き

ソウル・テハンノ(大学路)界わい/ 韓国

2012年3月8日(木) 初回放送

語り:田畑智子

撮影時期:2012年1月

街の「マロニエ公園」

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 朝10時、街の中心部でまだ人出の少ない公園を歩いていたおじさんに、ここはどんな場所かを尋ねてみたところ、「ここにはね、昔、ソウル大学があった。マロニエの木があるからマロニエ公園。この辺りは小劇場が本当に多い」と笑顔で教えてくれました。聞けば、おじさんはこれから勉強をしに行くと言います。何だか急いでいる様子でしたが、親切に質問に答えてくれました。
 この公園には、かつてのソウル大学のキャンパスにあったマロニエの木と本館が残っています。公園の真ん中にはソウル大学の模型があります。週末には多くの路上パフォーマーが集まり、パフォーマンスを披露したり、イベントが催されたり、にぎやかな文化・芸術の街、テハンノを象徴する公園です。
 それにしても、公園のことを教えてくれたあのおじさん、いったい何の勉強をしに行ったのでしょうか? ちょっと気になりました。

街の「靴下おじさん」

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 経済成長著しいソウルにあって今も古い街並みを残す地区が、テハンノの山の上の地区にあります。その地区を歩いていると、どこからともなく機械の音が聞こえてきました。音のする方へ進んでいくと、大きな荷物を持って急な階段を上ってくるおじさんに出会いました。その荷物は靴下で、おじさんはそれを自分の家に運ぶところだと言います。おじさんの家の中から機械の音が聞こえてくるので、気になって中を見せてもらえないか尋ねたところ、「いいよ、入って」と快く招き入れてくれました。お言葉に甘えてお邪魔したところ、数台の機械が並んでいました。なんでもこの辺りは、家の中に機械があり、工場のようになっているお宅が多いのだとか。おじさんは、この地区に住んで長年、靴下を作り続けてきたそうです。機械は古いものの精密にできているので、70年間故障なしで働き続けてくれているとのこと。今はどんな靴下を作っているのか尋ねてみると、「軍隊用の靴下、寒い冬用の靴下だよ」「この靴下を履く人は、みんな私の息子。息子が軍隊に行って履いていると思って、丹精込めて作っているんだよ」と語ってくれました。
 街については、「20代の時にソウルへやってきて、ここに移り住んだ。今は老人ばかりの街になってしまったけど、お互いに助け合い、皆が兄弟みたいな街なんだ。いい街だよ」と言います。
 この街で懸命に生きてきたおじさんの、街への思いにふれたひとときでした。

街の「赤いレンガ物語」

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 劇場街を歩いていると、マロニエ公園横の赤いレンガの建物の前に人だかりができているのを発見。近づいていくと、2人の男性がギターを弾いて歌っています。毒舌まじりのパフォーマンスに、道行く人は大喜び。パフォーマンスを終えた彼らに話しかけてみると、「ここでやり始めて14年、テハンノでは20年になる。この赤いレンガが舞台だから、俺たちは“赤いレンガ物語”っていうんだよ」と教えてくれました。そんなに長く続けてきたのは、「近年、路上パフォーマンスの文化が無くなりつつある。俺たちだけでもここで頑張って路上パフォーマンスをやり続けていきたいんだ」という情熱からだと言います。路上パフォーマンスを続けて20年。強い思いを持ち続ける2人の芸人に出会い、改めてテハンノが文化と芸術の街であることを痛感させられました。

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