これまでの街歩き

ルネサンスの誇り
フィレンツェ/ イタリア

2018年4月3日(火) 初回放送

語り:松重 豊

撮影時期:2017年11月

世界地図

地図

場所

 フィレンツェはイタリア中部トスカーナ州の州都で、ミラノとローマのほぼ中間に位置します。紀元前10世紀頃にできたエトルリア人の集落がその起源とされています。紀元前1世紀にカエサルによって古代ローマの植民都市となり、「花の女神」フローラの街としてフロレンティアと名付けられました。
 その後、さまざまな国の支配を受けますが、12世紀初期に自治都市として独立を果たしました。14世紀から15世紀にかけて商業と金融業で富をなしたメディチ家が街を支配するようになると、その庇護(ひご)の元、ミケランジェロ、ダビンチ、ボッティチェリなどの芸術家が数々の傑作を生み出し、ルネサンス文化が花開きました。当時の歴史的建築物が数多く残る旧市街は「屋根のない美術館」と称され、1982年に世界遺産に登録されています。

Information

薬局にみるフィレンツェの歴史

 薬局には、フィレンツェの歴史が刻まれています。メディチ家が支配していたルネサンス時代、貿易の中心地だったフィレンツェには、世界各地から珍しい草や木の実、鉱石など、あらゆるが「薬」として集められました。古い教会の中にあるサン・マルコ薬局の天井には、エジプトのナイル川から運ばれたワニの剥製が展示されています。
 薬局はルネサンスの芸術とも深い関わりがありました。絵の具の原料の多くを取り扱い、調合を行っていたからです。当時、薬局は、芸術家たちの交流サロンでもありました。
 800年もの歴史を持つサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局は世界最古の薬局の一つ。17世紀、猛威を振るったペストの感染を防ぐ目的で「7人の盗賊」という酢がここで作られました。現在、街なかのバーでは この薬局で作られたリキュールを使ったカクテルを楽しめます。フィレンツェの「薬」は形を変え、街の人々にも愛され続けています。

食べ歩きグルメ

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!

食べ盛りの高校生、ニッコロー・アルフィエーリくんが、フィレンツェっ子の大好きな伝統の肉料理を紹介します。

ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ

牛の骨付き肉の分厚いステーキ。5センチ以上厚みのあるものもあります。伝統的な焼き方は、2〜3週間熟成させた肉を強火で、外は焦げるほど香ばしく、中はレアに仕上げます。かみしめるたびに肉のうまみがじわっと染み出てくるんですよ。

フィノッキオーナ

イタリアにはおいしいハムやサラミがたくさんありますが、トスカーナ地方を代表するものといえば、フィノッキオーナ。肉に混ぜ込まれたウイキョウ(フィノッキオ)の種が独特の甘い香りを醸し出します。クリームチーズと合わせていただくのがおすすめ。

トリッパ・アッラ・フィオレンティーナ

牛の2番めの胃袋を香味野菜とトマトで煮込んだ料理。かつては捨てられていた牛の胃袋ですが、セロリ、玉ねぎ、トマトなどと一緒にじっくり煮込むことで、美味しい料理に大変身!そのまま皿に盛ってもよし、パンに挟んでもよし。安くて気軽に食べられるため、庶民に人気の一品です。

ちょっとより道

街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます!

天空の街 チヴィタ・ディ・バーニョレージョ
語り:濱田マリ

 フィレンツェから南へ車でおよそ2時間半、チヴィタ・ディ・バーニョレージョは切り立った丘のてっぺんにある、正に「天空の街」。実はこのチヴィタ、大昔はもっと広い丘の上にありました。長い年月の間に地震や雨で周りが崩れ、現在の形になったのだとか。
 街へつながる道は細い橋が1本きり。歩いていくしかありません。古めかしい門をくぐると、石造りのこじんまりとした街並みが。レストランに入ると、中はまるで洞窟のような造り。オーナーによると、この街には紀元前からエトルリア人が住み、彼らは洞窟を掘って住宅や貯蔵庫にしていたんだとか。1500年頃からオーナー一族が引き継ぎ、オリーブオイルを搾る作業場として使っていたそうです。
 街の下に広がるオリーブ畑では、長い棒で枝をたたいて実を落とす、昔ながらの方法で収穫の真っ最中。険しい地形のため、機械を入れることができないのです。採れたての実を搾ったオリーブオイルはすばらしく鮮やかな色!搾りたては、たっぷりパンにかけてシンプルにいただくのが最高!「天空の街」は、数千年前のイタリアの暮らしが受け継がれたタイムカプセルのような街でした。

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