これまでの街歩き

タスマニア島ホバート/ オーストラリア

2010年5月16日(日) 初回放送

語り:田畑智子

撮影時期:2010年3月

街の「蒸気船」

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港の一角に、小ぶりですがひときわ目立つ、美しい木造の蒸気船が係留されています。普段はしっかりとシートがかけられていますが、この日は手入れのために外されていました。所有者の団体のおじさんが、船内を掃除中。ピカピカに磨かれた蒸気エンジンや窓枠、それに圧巻なのは船首にある真ちゅう製の「大砲」。長さ1m程で、ミニチュアのように見えますが、おじさんいわく本物で、ちゃんと撃てるんだとか。
この船は1896年にホバートで造られ、これまで3回も沈没し、そのたびに修復されて今に至るそうです。このおじさんも、16年前、港で半分沈み、廃船になっていたこの船を仲間と一緒に引き上げ、コツコツと修復して今の美しい姿によみがえらせたんだそうです。
そもそもこの船を直そうとした理由は、小児がんの子供たちを、ダーウェント川の旅に連れて行ってあげたかったからだそうで、今でもこの目的は変わりません。これまでずっとボランティアで、自分たちで活動資金をねん出してきましたが、これからは観光客も乗せて船の維持費だけでも稼げればと言います。
子供たちの夢を乗せて走るピカピカの蒸気船です。

街の「倉庫群」

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港の南側の埠頭(ふとう)に平行して建つ石造りの倉庫群が「サラマンカプレイス」です。この倉庫は1830年代に建てられたもので、タスマニアの特産品である羊毛や穀物の集積所として利用されていました。また、イギリスやヨーロッパ各国から輸入したさまざまな物品の保管場所でもあり、タスマニアにとってとても重要な役割を果たしていたのです。
サラマンカプレイスは、砂岩の建造物としてはタスマニアでもっとも古いもののひとつ。植民地開拓時代の面影を今に伝える貴重な建造物です。現在、内部は、カフェや土産物店、書店、アートギャラリーなどに改装され、朝から晩まで大にぎわいの人気スポットとなっています。またアートイベントの発信基地としても、近年若者を中心に人気が高まっています。
このサラマンカプレイス前の道路は、毎週土曜日にマーケットが立ち、食料品から日用雑貨まで、ありとあらゆるものを売るテントであふれます。ホバートでもっとも歴史を感じる場所でありながら今の街のエネルギーも同時に感じることができる。まさに街の顔といえる場所です。

街の「白い家」

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港の南に位置する丘陵地帯は、バッテリーポイントと呼ばれる閑静な住宅街となっています。このバッテリーポイントという地名は、「砲台のある場所」という意味。昔、ホバートを攻めようとする敵の船に備えて砲台が設置されていたんだそうです。街や港の建設にやってきたイギリス人技師や役人の邸宅が造られ、19世紀初頭からホバートの高級住宅街として存在していました。中には250年前に建てられたという家まであるんだとか。
その丘の中腹に130年前に建てられたという、木造の白い大きな家が建っています。庭で植木の手入れをしていた、おばあさんのご好意で家の中を拝見させてもらいました。キッチンの大きな窓から見える入り江の風景はまさに絶景。空の明るい青と入り江の青が、風景画のように目の前に広がります。二階のテラスからの眺めも感動モノ。聞けば、おばあさんはこの家に一人暮らしなんだそうで、毎週水曜の晩に子供たちの家族が集まってディナーを一緒に食べるのが一番の楽しみなんだそうです。明るくよく笑うおばあさんの話を聞いていると、こちらまで満たされた気持ちになってしまうステキな白いお家でのひと時でした。

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