これまでの街歩き

ドイツ 街道の街を歩く
ニュルンベルク/ ドイツ

2011年9月7日(水) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2011年6月

街の「快適老人ホーム」

Photo

 にぎわいを見せる大通りを抜け、橋の向こう側に、川の中に建つ建物を発見。どうやら中州にかかっているようです。反対側に回り込んで建物の入口から入ってみると、中庭に出ました。奥の階段を上るとまた中庭が。中庭の中に中庭?上を見ると、吹き抜けの脇にきれいな花壇があります。ここは、何の建物なのでしょうか?
 中庭のテーブルを囲み、たくさんのお年寄りが座って談笑していました。こんにちは、ここは何の建物ですか、と声をかけてみました。「ここは老人ホームよ。私たちのたまり場なのよ」答えてくれたのは、テーブルでトランプをして遊んでいるおばあさんたち4人組。一番トランプが強い方はなんと93歳!手前のおばあさんはよく見るとビールを飲んでいます。昼から大好きなビール!ご機嫌ですね。
 ホームからお出かけ途中のおばあさんが、施設内のレストランに案内してくれました。そこは屋外にあるパラソル付きのレストラン。仲間と食事を楽しむには、もってこいの場所です。なんともすてきな老人ホーム。お年寄りたちが生き生きと見えました。

街の「鉄職人」

Photo

 神聖ローマ帝国時代の皇帝の城カイザーブルクを通って、そのまま城壁沿いに歩いていると、何やら金属をたたくような音が。音の出る場所に行ってみると、鉄の扉を直している街の鉄職人さんに出会いました。職人さんが直していたのは、城の地下の門扉。100年も前に作られたものだそうです。
 職人さんは街の修復をずっと続けているおかげで、市から城壁の中を提供されて工房にしているとのこと。修理している物の中には、なんと500年前の扉という年代物もありました。この職人さん、第二次大戦でニュルンベルクの旧市街が90%近く破壊された少年時代、同じ鉄職人だったお父さんの手伝いで、がれきの中から部品を見つけたりして作業しているうちに、この仕事に目覚めたといいます。街の中央広場のシンボル「美の泉」のほか、100mごとに自分の手がけた物を見つけることができて、そのたびに「自分が直したんだ」と誇らしい気持ちになるのだそうです。地道な努力を重ねた職人さんたちの誇りが、これからも街の中に残り続けていくといいですね。

街の「塔の住民」

Photo

 城壁沿いを歩いていると、行き止まりにぶつかりました。目の前には川。見上げると、川を横切る城壁を人が通っているではありませんか。橋になっているのでしょうか。どうしたらあそこに行けるのかな?と周囲を見渡すと、橋から続く通路の突き当たりに塔が建っています。そこから橋に行けるのかもしれません。
 塔の方に歩いて上を見上げると、女性が通路から顔を出して、花に水やりをしています。あの橋にはそこから行けるんですか、と声をかけてみると「いいえ。ここからは渡れないの。ここは私の家なの」と答える女性。家?「良かったら入ってみる?」と言われ、興味津々でお邪魔することに。
 塔の下で出迎えてくれたのは、女性の旦那さん。自宅でソフトウエア会社を経営しているとのこと。旦那さんに言われるまま、みしみし音を立てる階段を上がると、階ごとに色分けされた部屋が。2階のお風呂場は青、3階のキッチンは緑。おしゃれな家ですね。そこに奥さんも合流。お二人に話を聞いてみると、この塔は13~14世紀ごろに造られ、保存状態がいいことから住居として貸し出されているとのこと。15年前から住んでいるお二人は、500年の城壁の歴史の中で自分たちはただの“客人”に過ぎず、塔に「守ってもらっている」のだと言います。壁が厚いというこの塔は、寒暖の差も騒音も感じることなく、快適に過ごせるとのこと。風情もあるし、うらやましいですね。
 さっき見た橋に行ってみたいと伝えると、ご夫婦はさらに上へ案内してくれました。塔の5階、最初に奥さんが顔を出していた場所に出ました。通路を改良したベランダのようになっています。そして、その先にある扉を開けてみると…なんと道路が!城壁の外側(新市街側)は車が行き交う別世界でした。橋はすぐこの先に見つかるとのこと。塔の住民に別れを告げました。

※NHKサイトを離れます
ページトップ