これまでの街歩き

パツクアロ/ メキシコ

2010年2月25日(木) 初回放送

語り:中嶋朋子

撮影時期:2009年12月

世界地図

地図

場所

メキシコの中西部、ミチョアカン州にあるパツクアロは、標高2000mを超える高原の街。人口はおよそ8万。近くには大きなパツクアロ湖があり、その湖を囲むように先住民族の村とパツクアロの街があります。先住民族の文化とコロニアル文化が入り混じる、歴史ある街並みと人々の暮らしが魅力的です。

Information

炊き出し会

街の周囲には、先住民族が暮らす村が数多く点在しています。湖畔にあるラグーナ村もそのひとつ。
その昔、スペインの侵攻によって先住民族たちの生活が危機にさらされる中、宣教師・キロガ神父はいわば「一村一品運動」とも言えるシステムを考え出し、彼らの文化を守りました。
ある村には手芸の伝承を、ある村には陶芸を、といった具合にそれぞれの村で伝統の品を守り、それらを交換しあうことで、村どうしの交流を途絶えさせないという方策を打ち出したのです。
数百年経た今も伝統は守られています。ラグーナ村に伝えられたのは伝統料理と「分かち合い」の精神。
毎週金曜日に行われる炊き出しは、その日の当番の家が無償で村人に伝統料理を振る舞います。「コルンダ」と呼ばれるトウモロコシを蒸したチマキと、湖で獲れた魚の煮込みが決まったメニュー。
キロガ神父に感謝の祈りを捧げながら、伝統料理を囲むのが村人たちの習慣です。

湖の伝統漁

パツクアロ湖で一番大きな島、ハニツィオ島。先住民族が暮らすこの島では、伝統的な漁が受け継がれてきました。カヌーのような細長い一人用の丸木舟に乗り、チョウの羽根のような形をした「マリポーサ」と呼ばれる網を使います。網を水面に沈め、櫂(かい)でかき回して魚を追い込んでいくという漁法。
湖で獲れる白い小さな魚は、島の漁師たちの大切な収入源になっています。
軽く塩をふって、油で10分ほど揚げた魚は絶品。島の人たちは、カリッと揚がった魚を野菜とともにトルティーヤに挟み、トウガラシのソースとライムを絞って食べるのだそうです。
案内してくれたのは、祖先から受け継いだ漁を継ごうとがんばっている13歳の少年。漁を誇りに思うその気持ちがさわやかに感じられました。

ガイコツ

毎年11月にメキシコで行われる伝統行事、「死者の日」。この日は街のいたる所でガイコツが出現します。ガイコツのかぶり物で練り歩いたり、祭壇に花とともにガイコツを置いたり…。ガイコツは死者の日には欠かせない存在とされています。その始まりは、スペインの侵攻によって独自の信仰を禁じられた先住民族が、キリスト教の祝祭日に死者をまつったことでした。
キロガ神父の考案で陶芸が伝承されたカプーラ村で暮らす、芸術家のトーレス氏は「ガイコツ人形」作りの先駆者。「カトリーナ」と呼ばれるこの人形、老若男女、金持ち、妊婦など…姿はさまざまです。先住民族の死生観を表すガイコツにトーレス氏が込めるのは、生と死は誰にも避けられないものだというもの。どんなに金持ちでも、民族が違っても、人間は皆平等であるのだという思想をガイコツ人形・カトリーナは今に伝えているのです。

※NHKサイトを離れます
ページトップ