これまでの街歩き

アルプスが見える街Ⅲ
ルガーノ/ スイス

2010年9月19日(日) 初回放送

語り:中嶋朋子

撮影時期:2010年6月

世界地図

地図

場所

スイス南部に位置するルガーノは、スイスとイタリアにまたがるルガーノ湖に面した人口およそ5万7000の街。アルプスの峰々が北からの冷たい風を遮るとともに地中海からの暖かい空気をとどまらせてくれるおかげで、一年中温暖な気候に恵まれています。そのため、高級リゾート地として人気が高く、“スイスのモンテカルロ”とも呼ばれています。住民の多くはイタリア語を話し、長い歴史を通してイタリアの影響を受けてきたことがわかります。
また、ルガーノはスイス第3の金融都市で、100を超える銀行が存在。第二次世界大戦後、経済復興を遂げたイタリアから大量の資本が流入したことで発展しました。
さらに、世界で活躍する建築家マリオ・ボッタが拠点を置く街としても有名。街のあちらこちらで独創的な現代建築と出会える街としても注目されています。

Information

雲上の礼拝堂

ルガーノから車で20分。ふもとからケーブルカーに乗ると、そこはモンテ・タマロの山上。パラグライダーや、マウンテンバイク、子どもに大人気のコースターなどを、アルプスの雄大な風景を眺めながら楽しむことができます。
ここに来て忘れちゃいけないのが礼拝堂。世界で活躍するスイス人建築家のマリオ・ボッタが手がけました。回転式の扉から中へ入ると、内部は円形になっていて、床に近い場所にはたくさんの小さな窓が設けられています。教会建築で重要なのは、光の演出。足元が光で照らされ、まるで宙に浮いているような不思議な空間です。中央の祭壇に描かれた大きな手は、聖母マリアを象徴し、人々を優しく包み込む聖母の慈愛を表現しています。最後に、見晴らしのいい屋上に上がって、十字架の向こうにそびえるアルプスを眺めてみてください。安らかな気持ちになりますよ。

市民保護局

市民保護局とは、テロや戦争、自然災害などが発生した際に、市民の生命財産を守るための組織です。スイス全土で市や町ごとに組織され、いざというときに備えています。ルガーノ地区の司令部は消防署の地下にあり、堅固な造り。人命救助や災害復興の機材を備えています。入り口は、厳重な空気洗浄装置を設けているので、汚染された空気が内部に侵入することはありません。室内の換気装置にも毒ガス除去フィルターを設置。発電機は万が一、機械が故障しても電力を確保できるよう、手動でも動くなど、万全な備えのシェルターにもなっています。そもそもスイスには、人口の95%の人々が利用できるほど多くのシェルターがあります。司令部のシェルターは、非常時には避難した市民へ正確な情報を提供する役目も担います。
でもこの施設はまだピカピカ。それは平和の証しです。すばらしい施設ですが、いつまでも使用されずにピカピカであることを願わずにはいられません。

税関(密輸)博物館

ルガーノから、船でおよそ30分。船でしか行くことのできない湖畔に税関博物館はあります。またの名を密輸博物館。イタリア国境にあり、実際に税関だった建物に湖を舞台に繰り広げられた密輸の歴史を展示しています。
密輸が最も盛んだったのは戦争中。例えば、第二次世界大戦中に密輸業者が使用した特別仕様のボートは、なんと水中に潜って進むことができました。密輸品はハムや肉。積み荷に防水加工を施し、その重さをボートを操縦する人間の体重とともに厳密に計算。水面下60cmに沈むように調整し、運搬したのです。水面下60cmとは、人間の頭だけが湖面から突き出る絶妙な沈み方でした。ここにはそうした税関と密輸業者との知恵比べの様子を示す品々が展示されています。近年特に増えている密輸品は遺跡の発掘品です。これからの税関は、文化財を守る役目も担わなくてはなりません。

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