これまでの街歩き

アビニョン/ フランス

2011年3月6日(日) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2010年11月

世界地図

地図

場所

フランス南部のプロバンス地方。ローヌ川に沿った人口9万の街アビニョンは、城壁で囲まれた歴史地区が世界遺産に登録されています。パリからは高速列車のTGVで2時間半ほど。アルルからは急行列車でおよそ20分、マルセイユからは1時間ほどです。TGV駅から市内まではバスで15分。在来線の鉄道駅は、降り立つと目の前に城壁があり、そこをくぐれば旧市街です。
アビニョンは14世紀、70年にわたってカトリックの法王庁が置かれ、キリスト教世界の中心として栄えました。今は毎夏1か月にわたる演劇祭が行われる文化都市としても知られています。
石畳の路地は細く曲がりくねっている上に建物の壁が高いため、街は迷路のよう。南仏らしく、穏やかで明るい人たちが暮らしています。

Information

フランス質屋発祥の街

16世紀、宗教戦争やペストが流行した影響で庶民の生活は苦しく、高利貸しから借金しては返済できず、投獄される人が数多くいました。かつて法王庁があったアビニョンには多くの教会や修道会があり、富裕層からの寄付が集まりました。それを元手に、ある修道会が庶民を高利貸しから守るため、お金を貸す仕組みを始めていました。
1610年、その仕組みを発展させ、行政官たちによってフランスで初めての公共の質屋が創設されました。当時の質草(しちぐさ)は、猟銃やドレスといった高価なものから、シーツやカーテン、バケツやアイロンなどの日用品も多くありました。利率は5%以下に保たれ、質入れできる期間は1年。1年経っても出しに来ない場合、質草は競売にかけられました。
当時、質屋として使われた建物は、現在はその歴史を紹介する博物館として公開されています。公共の質屋は、現在も存在していて、メインストリートに場所を移しています。今の質草は、電気器具や宝飾品が中心だとか…。時代が変われども、街の人たちのニーズは変わらないようです。

演劇の都

アビニョンでは1947年以来、毎年、国際演劇祭が行われています。夏のおよそ1か月、街中のあちらこちらでお芝居やオペラ、ダンスの公演が行われ、その数は千を超えます。メイン会場は、旧法王庁の中庭。600年前に造られた石の広場が、演劇祭の期間中は大野外劇場になるのです。ジャンヌ・モロー、マリア・カザレス、ジェラ―ル・フィリップ、モーリス・ベジャール バレエ団など、数々のスターたちがその舞台に立ってきました。
フェスティバルの期間以外も、さまざまな劇場で公演が行われるほか、一般の人たちや子ども向けの演劇ワークショップも盛んです。ワークショップの参加者がプロの俳優になることも珍しくないのだとか…。アビニョンは世界に知られる「演劇の街」でもあるのです。

名物”パパリン”

アビニョンには「パパリン」というかわいい名前のチョコレートボンボンがあります。街のパティシエが結集して、アビニョン名物を作ろうと知恵を出し合い、生み出したのが1960年のこと。ピンクのかわいいチョコに見えますが実は大人の味。その秘密はボンボンの中身にあります。オレガノ、杉の芽、ハッカ、タイム、セ―ジ、カンゾウ、ニガヨモギなど、60種類ものハーブをリキュールに漬け込んで作った地元産の薬草酒がたっぷり入っているのです。この薬草酒、19世紀にアビニョンをコレラが襲った時、その被害を食い止めたと伝えられる薬効の高いお酒です。これを砂糖の衣とカカオ70%のブラックチョコ、さらにはピンクのチョコでコーティングしてからトゲトゲの前衛的な表情をブラシでつけてできあがり。
アビニョンに行ったらぜひ、試してみてくださいね。

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