これまでの街歩き

シエナ/ イタリア

2011年3月27日(日) 初回放送

語り:田畑智子

撮影時期:2010年11月

世界地図

地図

場所

 イタリア中部トスカーナ地方。丘の上に広がる人口5万5000の街シエナは、城壁で囲まれた歴史地区が世界遺産に登録されています。ローマからは列車、あるいはバスで3時間ほど。在来線の鉄道駅から15分ほど歩くと、旧市街にたどり着きます。
 13~15世紀、シエナは同じトスカーナのフィレンツェと中部イタリアを二分する勢力を誇った都市国家で、ルネサンス美術をリードし、商業、金融、手工業が栄えていました。今もイタリア最古の銀行が営業中です。坂が多く、平らな道はほとんどないシエナの路地は立体の迷路のよう。そこで人々は家族のような強い絆に結ばれて暮らしています。
 「シエナの赤」と呼ばれるレンガ色で統一された美しい街並みが、多くの観光客を魅了しています。

Information

デザートワイン

 シエナのあるトスカーナ州は、世界的に有名なワインの産地。太陽が十分に降り注ぎ、乾燥した気候、粘土質や石灰質の土壌…ワイン造りに適した条件がそろうシエナ周辺のブドウ畑は「神さまに選ばれた土地」と言われます。
 なかでもデザートワインは、複雑な香りと、芳醇(ほうじゅん)な味わいが特徴。醸造に手がかかるので、最もぜいたくなワインと言われています。収穫したブドウを、風通しのいい日陰に3か月干して乾燥させ、糖度を高めてから醸造。状態のいいブドウだけを樽(たる)に仕込みます。
 シエナでは、名物のリッチャレッリやパンフォルテといったお菓子をデザートワインといっしょにいただくのが主流。デザートワインは、後味に上品な苦みが残るのでお菓子との相性がよく、特に女性に人気。シエナには、イタリアワインを紹介する国立機関「エノテカ・イタリアーナ」があり、トスカーナをはじめ、イタリア全土のワインを試飲できます。ワイン好きの方におすすめです。

コントラーダ博物館

シエナの旧市街は、17の地区に分けられています。「コントラーダ」と呼ばれる、いわば町内会のようなもの。その歴史は500年以上続いていて、それぞれが博物館や教会、調理場や集会所を持っています。
ご紹介するのは「森のコントラーダ」の博物館。シエナで最も重要な伝統行事、「パリオ」と呼ばれるコントラーダ対抗の競馬で使った衣装やヘルメット、優勝旗や写真などが展示してあります。パリオは毎年7月と8月にカンポ広場で行われ、勝てば祝賀会は1年中続きます。
コントラーダのメンバーは、ふだんから密なつきあいをしています。毎週、夕食会を開いて手料理を囲みます。その絆は家族も同様。日ごろから助け合っているのです。ただ、恋人が他のコントラーダだとデートもままならず、「私とコントラーダ、どっちが大事なの?」とケンカになることも多いそう。コントラーダはそれぞれキリン、芋虫、カタツムリ、ワシ、ヒョウなど、動物のシンボルマークを持っています。シエナの旧市街を歩いていると、それらの動物の像やプレートを見つけることができますよ。

シエナ大聖堂

レンガ色の街シエナの中で、シエナ大聖堂はめずらしく白い大理石で造られています。1220年代ごろから200年がかりで完成させたゴシック建築の傑作です。同じころ、大聖堂を建てていたフィレンツェに負けまいと、ミケランジェロはじめ、一流の芸術家を投入し、贅(ぜい)を尽くした装飾が施されました。最も知られているのは床一面の装飾。街の紋章や聖書を題材にした絵が描かれています。大理石をはめ込み、上から彫刻を施したものやモザイクなど、手の込んだものばかり。作品保護のため、年に2か月間だけ公開されます。
そして、華やかな「ピッコローミニ家の図書館」。壁から天井までを覆い尽くすフレスコ画は、ピントゥリッキオの作品です。壁にはシエナ出身の法王、ピウス2世の生涯が描かれています。実は、シエナの大聖堂は、現在の倍の大きさに拡張する計画がありました。しかし、ペストの流行や飢きんのために財政難に陥り工事は中断。外壁や正面部分が未完成のまま今も残っており、展望台として公開されています。大聖堂はシエナの街の波乱の歴史も象徴しています。

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