これまでの街歩き

ドイツ 街道の街を歩く
リューネブルク/ ドイツ

2011年9月28日(水) 初回放送

語り:松田洋治

撮影時期:2011年7月

世界地図

地図

場所

 ドイツ北部、人口およそ7万のリューネブルクは、中世のころから塩の産地として有名です。白く良質な塩のおかげで、中世にはヨーロッパでも有数の裕福な街として繁栄しました。1000年も続いた塩の生産がもたらした、街独特の豪気で品のあるたたずまいは、この街に暮らす人たちに今も受け継がれているようです。
 また、街の周りには「リューネブルガーハイデ」と呼ばれる緑豊かな原野が広がり、ドイツでも指折りの風光明美なところとして、近隣の人たちから愛されています。

Information

白い金と塩街道

 1000年以上にわたって塩を生産し続けてきた塩の街リューネブルク。最盛期の14~16世紀には年間2万2000トンもの塩を生産し、当時ドイツではケルンに次ぐ2番目に大きな都市として、ヨーロッパでも名の通った街でした。
 リューネブルクの街の地下には、街全体を覆うほどの巨大な岩塩の固まりがあり、その岩塩の周りを流れる地下水脈に溶け出した塩を、塩水としてくみ上げることで塩を取り出しました。塩水を巨大なフライパンで熱し、水分を蒸発させて塩を精製したのです。当時、塩は“白い金”と呼ばれ、樽(たる)2つ分で家が建ったといわれるほど高価なものでした。
 塩はバルト海に面した港町リューベックを経由してハンザ同盟の各都市に運ばれました。逆に各地からは塩漬けニシンなどの食品をはじめ、あらゆる物品がリューネブルクにもたらされたのです。
 この「塩街道」は、現在は観光街道の一つとして整備され、全長80kmというコンパクトさからハイキングやサイクリングを楽しむ人たちで大いににぎわいます。

原野を守る羊飼い

 リューネブルクの周りにはリューネブルガーハイデと呼ばれる、緑豊かな“原野(ハイデ)”が広がっています。ここは元々森林でしたが、中世期、塩の生産に必要だった薪(まき)を得るために木が伐採され、現在のような原野になったと言われています。伐採後の原野にはさまざまな植物が花を咲かせ、独特の自然環境が保たれています。
 ここでは伝統的な技能者として羊飼いが尊敬されていて、体験ツアーも行われています。羊飼いは原野を守る役割も担っていて、森が伐採された後に人工的に植えられた松の苗木を羊に食べさせることで、松が無秩序に広がって原野が枯れてしまわないように調整しています。羊飼いは1日に10kmもの距離を羊と一緒に歩きながら、ハイデの環境に目を光らせているのです。

2つの郷土料理

 リューネブルクの郷土料理といえば、誰もが好きな「シュティント」という魚を使った料理です。シュティントはバルト海や北海、そしてエルベ川などで獲れる大きさ10cmほどの大衆魚。見た目はイワシやキスに似た白身魚で、フライにして丸ごと食べるのがリューネブルク風です。昔は街の中を流れるイルメナウ川でも獲れ、港の魚市場はシュティント市場と呼ばれていたほど身近な魚でした。
 街には数年前のアートフェスティバルで飾られたシュティントのオブジェがいたる所に置かれ、市民の目を楽しませています。そして、もう一つ忘れてはならない郷土料理は、リューネブルガーハイデの羊飼いが育てる「ハイドシュヌッケン」という羊の肉を使った料理。ワインに浸けて臭みを抜き、蒸し焼きにしたメニューが人気です。ハイドシュヌッケンは、ハイデに育つハーブを存分に食べているため、肉自体にハーブの香りが付いていて、実に芳じゅんな味わい。クリスマスやイースター(復活祭)など、家族や親戚が集まる席では欠かせない味なんだそうです。

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