これまでの街歩き

クエンカ/ スペイン

2011年11月10日(木) 初回放送

語り:桂文珍

撮影時期:2011年9月

世界地図

地図

場所

 スペイン中央部、カスティーヤ・ラ・マンチャ州にある街、クエンカ。クエンカ県の県都で人口はおよそ5万。崖の上に建物がひしめき合う旧市街は世界遺産にも登録されています。マドリードから電車やバスでおよそ2時間と日帰りが可能なため、国内外から多くの観光客が訪れます。
 街の歴史は古く、9世紀ごろ、イスラム教徒が切り立った崖を天然の要塞として利用したのが始まりです。2つの川に挟まれた急しゅんな崖の上にできた街は鉄壁の防御を誇りました。しかし、12世紀、キリスト教徒により征服されてしまいます。その後、街の発展とともに人口も増え続け、崖の上の小さな街には所狭しと家が並び崖からせり出すものも建てられました。
 奇岩の連なる断崖絶壁と小さな家々がひしめき合う光景は独特で、「魔法にかけられた街」と呼ばれ、訪れる多くの人々を魅了し続けています。

Information

崖の街はこうしてできた

 クエンカの旧市街は、険しい崖の上につくられています。いくつもの奇岩が連なる不思議な崖の地形は、長い年月をかけて今の状態になりました。崖の上の土地は、雨や風に浸食されやすいという特徴を持つ石灰岩でできています。
 2つの川に挟まれ、ちょうど中州のようになっているクエンカの旧市街。雨がつくり出した川が土地を削り、現在のような切り立った地形が形成されたのです。また、街の発展で人口が増え続け、土地が足りなくなると、クエンカの人々は建物を崖のへりにまで広げていきました。崖に家々がビッシリと並ぶ独特な景観は、こうしてつくられたのです。
 断崖絶壁にせり出す建物はクエンカの魅力の1つ。「宙吊りの家」と呼ばれる建物は、現在、抽象画美術館として観光スポットになっています。クエンカは、崖の独特な景観にインスピレーションを得ようと芸術家たちが集い、暮らしてきた街でもあるのです。クエンカにお越しの際は、景観だけではなく、現代アートも楽しんでみては?

マス釣りとロッククライミング

 クエンカでは、豊かな自然の中でアウトドアレジャーを楽しむことができます。崖の上の旧市街を離れ、車で30分。鮮やかな緑まぶしい森の湖で、マス釣りはいかがでしょうか。気持ちのいい空気の中、存分にマス釣りを楽しんだあとは、隣のレストランで釣った魚を食べることもできます。マスにスペイン名物の生ハムを挟み、5分揚げれば出来上がり。シンプルだけど、生ハムの塩味がマスにしみこんで、なんとも深い味わいを楽しめます。
 「マス釣りだけじゃもの足りない」という人は、ロッククライミングに挑戦してはいかがでしょう。クエンカといえば、やはり崖と岩の街。渓谷の断崖に多くのクライミングスポットがあり、世界各地からクライマーが集まって来ます。

洞窟

 岩の街クエンカでは、洞窟が人々の生活と密接に結びついています。洞窟は1年を通して温度が一定に保たれるため、夏は涼しく冬は暖かいという特性があります。そのため、家々の倉庫や寝室に使われています。街を歩くと「洞窟バー」なる場所も発見できます。洞窟は、ワインなどのお酒を保存しておくのにもうってつけの場所なのです。
 そして、クエンカが戦争に巻き込まれた際、街の人たちを救ったのもこの洞窟でした。1936年に起こったスペイン内戦。クエンカはフランコ率いる反乱軍の空爆の標的にされました。そこで街の人たちは、家の倉庫に使っていた洞窟を広げ「防空ごう」をつくりました。クエンカの街には、長さ100mもある防空ごうが、今も残っています。クエンカを襲った激しい空爆は4回にわたりました。しかし、洞窟を利用した防空ごうのおかげもあって、住民の犠牲はわずかに抑えられました。そんなことも、クエンカの人たちが岩を大切に思う理由なのかもしれません。
 クエンカを訪れたら、いろんな洞窟を見学・体験してみるのも一興です。

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