これまでの街歩き

ミコノス/ ギリシャ

2012年2月23日(木) 初回放送

語り:永作博美

撮影時期:2011年10月

世界地図

地図

場所

 ギリシャの首都アテネより南東に150km余り。エーゲ海、キクラデス諸島の1つがミコノス島です。人口およそ9300。そのうちミコノスの旧市街に暮らす人たちはおよそ6500人で、実に島の人口の3分の2以上の人たちが1キロメートル四方の旧市街に住んでいることになります。
 ミコノスという島の名前は、ギリシャ神話の太陽の神アポロンの孫の名前に由来します。紀元前5~3世紀ごろ、エーゲ海の政治の中心だったデロス島の繁栄に伴い、デロス人への農産物供給地、周辺諸島の休息地として発展しました。現在は、エーゲ海屈指のリゾート地としておしゃれなカフェやホテルが建ち並び、夏は大勢の観光客でにぎわっています。

Information

街の色

 ミコノス島の旧市街は、わずか1キロメートル四方。限られた土地を有効活用するために、一棟の家屋を分割所有するアパート形式が一般的です。しかし、建物も道も見事に真っ白に塗られた街なかでは、誰がどこの建物を所有しているのか分かりにくいのが難点。そこで、ミコノスでは中世から、建物の所有者を区別するために、ある習慣が根づいていました。それが「トーリス」と呼ばれる習慣です。白い建物を外からみて、一目でその所有者が分かるよう、ドアや窓枠の色を所有者ごとに色分けしているのです。かつてその塗料は、船用の余ったペンキを使っていたといわれ、色は船に多く使われた水色や青、黄色や赤が中心です。
 また、ミコノスでは美しい景観を保つため細かく条例が定められています。
 例えば、
 1、建物の高さは7.5mまで
 2、雨戸に使っていいのは木材のみ
 3、出入り口には裸電球禁止 
 …などなど。このうち1つでも違反すると、罰則として電気を止められてしまう決まりになっています。ミコノスの美しい景観は、住民たちの小さな努力の積み重ねによって保たれているんですね。

ミコノス織り

 ミコノス島には、「ミコノス織り」と呼ばれる伝統の織物があります。さまざまな色の糸で織られたストライプ柄で、幾重にも打ち寄せるエーゲ海の波を表しているともいわれています。ミコノス島では20世紀初頭まで、家族の衣服やテーブルクロスをはじめ、ほとんどの布製品がミコノス織りで作られてきました。現在、ミコノス島でその技術を受け継いでいる1人、イオアニナ・ズガネリさんは18歳のときから45年以上織り続けてきました。使いこまれた愛用の織り機とその手法は、おばあさんからお母さん、そして、イオアニナさんへと受け継がれてきました。
 そのイオアニナさんが、1つおもしろいことを教えてくれました。それは、このミコノス織りで編んだ袋「タガリ」のこと。もともと農作業中に携帯する袋として作られた物で、苗やお弁当、飲み水などを入れるのに使われていました。常に体にぶらさがっているその様子は、しつこい男性を例える言葉としても使われるようになったそうです。使い方は「あなたタガリみたいね!(ム・エギネス・タガリ!)」。男性のみなさん、愛する恋人からそんなことを言われないように気をつけましょう。

デロス島ツアー

 ミコノス島から西へ2.5km、船で40分で行けるデロス島。現在は無人島ですが、ギリシャ神話の太陽の神アポロンと、月の女神アルテミスが生まれたといわれる島で、キクラデス諸島の中でも神聖な島とされています。多くの巡礼者が島を訪れ紀元前8世紀ごろにはすでに古代都市が誕生していたそうです。古代ギリシャ、古代ローマ時代にエーゲ海の中心地として繁栄を誇ったデロス島は、当時の流行の発信基地。今でも島には当時の名残がたくさん残されています。
 例えば、当時の商人たちの住居跡には、床や壁に施した「モザイク飾り」。とても精緻なこの技術は、古代ローマへ伝わり、その後、ヨーロッパ全土に広まっていったというのだから驚きです!また、島内にあるデロス考古学博物館には、紀元前7世紀の学校から出土したという、子どものためのおもちゃの人形が保管されています。このおもちゃ、なんと関節が動くように作られていて、博物館のスタッフは敬意を込めて“世界最古のバービー人形”と呼んでいるそう。あの哲学者アリストテレスが、「子どもたちが人形というもので遊んでくれるおかげで、家の中を壊されずにすむ」と絶賛したとか。
 1990年にユネスコの世界文化遺産に指定されたデロス島。みなさんも“いにしえの流行発信基地”デロス島に来て、古代文化の息吹を感じてみてはいかがですか。

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