これまでの街歩き

コルフ/ ギリシャ

2012年3月1日(木) 初回放送

語り:八嶋智人

撮影時期:2011年10月

世界地図

地図

場所

 コルフ島の人口は11万2000。ギリシャの最も西に位置し、肥よくな丘陵地帯が続く温暖な島です。英語表記では「コルフ」、ギリシャ表記では「ケルキラ」として知られています。
 アドリア海の玄関口に位置するため、古代より東地中海の海上交通の要衝とされ、3世紀にローマ帝国に征服されて以来、13世紀からベネチア共和国、18世紀にはフランス、19世紀にはイギリスなど、西ヨーロッパ列強の影響下に置かれてきました。そのため、街なかにはさまざまなヨーロッパ文化が混在。その特異性からギリシャ人のみならず、観光地として、欧米人にも高い人気があります。2007年には、旧市街がユネスコ世界文化遺産に登録されました。理想のバカンス地として、多くの人が訪れています。
 飛行機はアテネから毎日4~5本の直行便が出ていて、所要時間は1時間ほど。ギリシャ西北の都市イグメニツァからは毎日船が運航していて、およそ90分でコルフ港に到着します。

Information

色濃く残るベネチア文化

 ベネチア様式のアーチ型の回廊や大理石の装飾などベネチアの香りが今なお強く残るコルフの旧市街。ギリシャのコルフ島に、これほどまでベネチアの影響が色濃く残る理由は、13世紀からおよそ400年続いたベネチア共和国による統治時代にあります。旧市街の東に突き出た岬に今も残る強固な要塞の跡。これは、当時、地中海沿岸の覇権をめぐってオスマン帝国と対立していたベネチア共和国が、その脅威に備えるために作ったものです。ベネチア共和国は、この要塞から入港する船を監視し、乗組員から海上で起きたありとあらゆることを聞き出し、本国に伝えていたといいます。その際の乗船記録は現存し、コルフ公文書館に残されています。
 しかし、幸いなことにコルフの街が両国の争いに巻き込まれることはありませんでした。そればかりか、コルフの温暖な気候にあこがれるベネチアからの入植者が増加し、さまざまなベネチアの文化がコルフに持ち込まれました。その名残が、旧市街の建物など街の景観に残っているのです。
 そうしたベネチア文化の最大のプレゼントといわれるのが、街なかにたくさんあるカフェ。17世紀、ヨーロッパで最初にカフェが普及したのがベネチアといわれ、その文化がそのままコルフにもたらされたのです。コルフに残るカフェ文化を、遠くベネチアに思いをはせながら楽しんでみるのもいいかもしれませんね。

ギリシャのマナー

 カフェに入って注文するときに、みなさんはどんなしぐさをしますか?「すみませーん!」と手のひらを相手に向けて手を挙げるしぐさ。これ、ギリシャではご法度なんです。実は、ギリシャではこのしぐさは「バカヤロー!」「地獄へ落ちろ!」という意味。一説には古代ギリシャの時代、嫌いな相手に向かって炭を投げつけたことが始まりだといわれています。そのため店員さんを呼び止めるとき、あるいは「水を5本ください」というしぐさで手を挙げるときは、手の甲を相手に向けるようにしましょう。
 ちなみに、ギリシャ語で「バカヤロー」という言葉は、魚の「タラ」を指すんですよ。
 所変われば、言葉もしぐさもまったく違う意味を持ってくるんですね。

オリーブせっけん

 コルフ島は、乾燥した大地が多いギリシャの島々の中でも珍しい、緑豊かな島。年間を通して安定した降水量を誇る肥よくな島では、オリーブやトマト、かんきつ類など多くの作物が実ります。中でも、17世紀頃にベネチアからもたらされたと言われるオリーブの木は、なんと現在400万本以上も栽培されていて、さまざまな製品が誕生しています。その代表格が「オリーブせっけん」。コルフ市内には数社のオリーブせっけんメーカーがあり、伝統を守った製法にこだわって、無添加・無香料のオリーブせっけんを製造・販売しています。肌に優しくマイルドな洗い上がりのため、コルフでは乳児の入浴と、その衣類の洗濯に使うのが古くからの習わし。また、老人ホームや病院などでも使われているそうです。
 価格もお手ごろなので、コルフへ来た際はお土産にいかがですか?

※NHKサイトを離れます
ページトップ