これまでの街歩き

魅惑の古都を行くⅢ
ドレスデン/ ドイツ

2012年9月18日(火) 初回放送

語り:松田洋治

撮影時期:2012年5月

世界地図

地図

場所

 ドレスデンはドイツの東の端、エルベ川沿いに開けた人口52万の都市です。中世にはエルベ川の水運を利用した商業都市として栄え、ザクセン選帝侯アウグスト強王(1670-1733年)の時代に、その最盛期を迎えました。旧市街を彩るバロック様式の建物も、もともとはこの時代に建てられたものです。王は文化や芸術の発展にも力を注いだため、現在でもドレスデンは音楽、美術の街として知られています。有名な“マイセン”の陶磁器も、この時期からドレスデンで作られています。第二次世界大戦時の空爆で、美しい街はがれきの山となってしまいました。しかし、東西ドイツ統一後、街の人々の熱意によって歴史的建造物が次々と再建され、現在では世界中から多くの観光客が訪れるようになりました。

Information

フラウエン教会再建

 フラウエン教会は、ドレスデンの黄金期を築いたアウグスト強王の命によって、1743年に建てられました。「石の釣り鐘」と呼ばれる巨大な石のドームは、ドレスデンを象徴する型破りな風景として人々に愛されてきました。
 ところが1945年、第二次世界大戦中の爆撃で教会は粉々に破壊されてしまったのです。その後の東ドイツ時代、がれきはそのまま放置され教会が修復されることはありませんでした。ようやく再建が始まったのは、1993年のことです。
 ドレスデンの人々は、教会を以前と全く同じ形に建て直すことに決めました。最もこだわったのは、がれきになっていた教会の石を、できる限り組み込むこと。仕分けした石の位置をコンピュータで割り出し、ひとつひとつはめていったのです。「史上最大のジグソーパズル」と呼ばれた気の遠くなるような作業は12年もかかり、2005年10月に完成しました。
 再建された教会は、よく見ると白黒のまだら模様になっています。黒い石はもとの石、白い石は新たに付け加えた石です。なんと全体の40%にオリジナルの黒い石が組み込まれているのです。
 こだわりは内部にも及んでいます。壁や祭壇の色を再現するため、建築当時の塗料の発注書を探したり、教会で結婚式を挙げた人から当時の写真を提供してもらったり、地道な活動を重ねたのです。
 ドレスデンの人々にとって、教会を元どおり再建することは、とても大事なことだったんですね。ばらばらになっていた教会は、戦争と東西分断で傷ついた人々の心、そのものだったのでしょう。

聖十字架合唱団

 音楽の都としても有名なドレスデン。毎週土曜日は教会で聖十字架合唱団の歌声を聴くことができます。これは700年以上も続く伝統です。
 合唱団には小学4年生から高校3年生まで150人の団員がいます。全員が聖十字架学校で一緒に勉強しています。学校には男女850人の生徒がいますがそのうちの男子150人が合唱団のメンバーというわけです。
 合唱団では協調性と自立性を育てるため少なくとも1年間は寄宿舎に住むことが義務付けられています。その後も寄宿舎に残る人は多く、現在は150人中90人が寄宿舎で生活しています。協調性はさまざまな役割分担で鍛えられます。コンサートに出かける時は、楽譜の準備から荷造りまで、全て子どもたちだけで行います。年長者から年少者へ、直接指導で受け継がれていくのです。
 また、団員は歌だけでなく、ピアノやギター、チェロなど、好きな楽器を学べます。個人指導も充実していて、音楽教育の環境は抜群です。食事の時には、お祈りの代わりに歌をささげるなど、生活の中に常に音楽があります。
 多くの合唱団では変声期を迎えると退団になりますが、聖十字架合唱団では残ることができます。これは合唱団が音楽だけでなく、人間的な成長にも重きを置いているからなんでしょうね。卒業後、音楽の道へ進む人は3分の1から4分の1で、それ以外はエンジニアや研究者、ビジネスマンなど、さまざまな分野で活躍しているといいます。
 聖十字架合唱団は何度か来日公演を行なっていて、2012年の冬も公演が予定されています。

食べ歩きグルメ

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!

 ドレスデン名物を紹介してくれるのは、料理学校に通うラウラさん。

アイアーシェッケ

ドレスデン名物といえばこれ。チーズケーキの一種で、ふんわりした卵の層と、ほのかな酸味のフレッシュチーズの層が絶妙のコンビネーションで最高においしい!パン屋さんでも買えます。
 ドレスデンではこんなふうに、スープからメイン、デザートまで、気軽にテイクアウトで楽しめるのでぜひ試してみてください!

ボックブルスト

ザクセン地方特有の大きなソーセージ。ゆでて食べるのが決まりで、お祭りの時には屋台も出るほど人気の品だとか。ドイツのお肉屋さんにはテーブルが置いてあって、ソーセージやハム、パン、飲み物などを注文して、その場で簡単な食事ができるんですよ。

ザクセン風じゃがいもスープ

じゃがいもが崩れるまでコトコト煮て作るボリューム満点のスープ。一緒に煮込むソーセージの塩味がポイント。ドイツでは、じゃがいもがたくさん食べられています。一人あたり年間、なんと57kgも食べているそうです。

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