これまでの街歩き

揚州/ 中国

2011年4月20日(水) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2011年3月

街の「井戸」

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揚州は井戸がとても多い街です。路地を歩くと必ず、洗濯や野菜を洗う人でにぎわう井戸を見つけることができます。井戸は庶民の憩いの場。文字通り“井戸端会議”があちらこちらで開かれています。東関街の近くの井戸で、一人のご婦人に出会いました。聞けば、地区に水道があっても、井戸に来るのだそうです。「井戸の水は、冬はあたたかいし、夏は冷たい。だからここの井戸水がみんな大好きなんだよ」とのこと。触れてみると、なるほどあたたかい!近代化が進んでも、変わらない生活がここにはあるんですね。去年、夫を亡くしたというご婦人でしたが、今は孫と暮らして、歌にダンスにと趣味がたくさんあって楽しそう!周囲からは「老いた“遊び盛り”」と言われる毎日なのだそうです。素敵なダンスも披露してくれました。井戸の水運びで鍛えているせいか、俊敏な動きにびっくり。人生を豊かに楽しんでいることに拍手をおくりたくなりました。

街の「三角形」

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うねうねと続く、“巷(ちまた)”と呼ばれる狭い路地をいくと、あることを発見。十字路などの建物の壁に三角形の“出っぱり”があるのです。しかも、途中から…。よく見ると、どうやら壁の角が削りとられた跡のようです。これは何?と、さっそく街の人に聞き込み調査。すると、いくつかの意見が。手前の道から向こうの道を見やすくするため、人がぶつからないようにするため、車が曲がりやすくするため…などなど。そんな話を聞いていた時に、まさに三輪車がやってきました。私たちがどいて道をゆずると、三輪車は角ぎりぎりで曲がっていきました。この“削れ”がなかったら、きっと通れなかったでしょう。とても狭い路地は「一人巷」と呼ばれています。これは“一人しか通れない巷”という意味。そして、一人しか通れないから、「道ですれ違う時は、互いにゆずり合いましょう」という意味も含んでいます。巷を歩く極意が、少しわかった気分になりました。

街の「気功」

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夕暮れせまる巷を歩いていると、屋根の上に人を発見!何かに向かって手を伸ばしています。上がっておいで、というお言葉に甘えて、お邪魔することに。ちょっと怖いはしごをつたってのぼると、おじさんが傾いた夕日に向かって手を伸ばしていました。毎日夕方、家の屋上で太陽の光を浴びながら気功をしているんだそうです。手を広げる向こうには、今日一日、迷路のようにぐるぐると歩いてきた街が一望できました。近代的なビルが建ち並ぶ大通りと、小さい家がひしめく古い路地“巷”。おじさんは「現在と過去がすべて見られる場所なんだ」と自慢気に話してくれました。変化の激しい中国地方都市の今を見たようでした。

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