これまでの街歩き

アメリカ・“楽園”の街を歩く
キーウェスト/ アメリカ

2011年6月22日(水) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2011年4月

街の「コンク共和国」

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旅行客が続々と押し寄せ、街が目を覚ます朝9時。一番の繁華街、デュバル・ストリートの入り口で、汽車の形の観光バスによりかかってバナナを食べているおじさんに声をかけられました。おじさんはこのバスの運転手で、バスの名前は「コンク・トレイン」というのだそう。この街では、いたる所で「コンク」という言葉を耳にします。「コンク」についておじさんにたずねると、「見せてあげるよ」と、運転席から大きな貝殻を取り出しました。「コンク」というのは、島の名物「コンク貝」のことだったんですね。コンク貝はほら貝のような形をしていて、フライにしたり、シチューにしたり、ステーキにしたりする、この島ではとてもポピュラーな食材です。
実は、キーウェストはその貝の名前をとって“コンク共和国”とも呼ばれています。1982年4月23日、時の市長がアメリカからの独立を一方的に宣言。もちろん独立はできなかったのですが、以来、キーウェストの人たちは毎年4月23日をコンク共和国独立記念日にして、およそ1週間、島を挙げてパレードやパーティーを催し、お祭り騒ぎをするのだとか。“独立できなかった日”を記念日にしてしまうなんて、本当におおらかですよね。

街の「電飾自転車」

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住宅街を歩いていると、何やら音楽が…。音のする方へ行ってみると、不思議な乗り物を整備するおじいさんに出会いました。よく見てみると、それは3輪の自転車に、たくさんの電飾をとりつけたもの。音楽プレーヤーもついていて、大音響で音楽を流すことができます。毎晩この電飾自転車で街を走り回っているのだとか。キーウェストの人たちは色鮮やかなものが好きで、消火栓や乗り物など、何でもかんでも派手にペイントしてしまいます。自動車にペイントしたものを「コンク・クルーザー」と呼ぶのですが、おじいさんの電飾自転車もその一種でしょうか。
島ではちょっとした有名人だというこの方、音楽がうるさすぎて、何回か警察に違反チケットを切られたのだそうですが、裁判所に出向いたところ、判事に「君の音楽はいいね。私も踊ったよ」と言われ、島公認のコンク・クルーザー乗りになったんだと教えてくれました。
「なぜ電飾自転車を始めたのですか?」とたずねてみたところ、「ビールとウィスキーとタバコだけの人生に 飽きたから」との答え。73歳、なんとも深みのあるお話でした。

街の「カニ・パーティー」

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海岸近くの住宅街を歩いていると、ヤシの木に囲まれた立派なお宅を見つけました。ガレージの前で子どもが2人、何やら作業をしている様子。パキッ!パキッ!という音が響いています。聞けば、ストーン・クラブというカニのハサミの殻を割っているとのこと。このカニは生きたまま捕まえ、ハサミだけを取って、海に返すのだそう。ハサミは数年でまた生えるため、この漁法がいいのだとか。
子どもたちのお父さんがやってきて、庭で開かれているカニ・パーティーに招待してくれました。お邪魔してみると、10人ほどの人たちがテーブルを囲んでいます。カニのおいしい季節にはこうしてカニ・パーティーを開くのがコンク流なのだとか。この島の人たちは、昔から「コンク」と呼ばれていて、島で生まれると本物の「コンク」、よそから来て住みつくと「淡水コンク」と呼ばれるそうです。パーティーの主催者のおばあさんは子どもを妊娠した時、フロリダの大学に通っていたのですが、故郷キーウェストの父親の「子どもをコンクにしてあげなさい」という言葉を受け、彼と二人で大学を辞め、島に戻って出産したのだそうです。この島の人々は「コンク」であることに、誇りを感じているようです。

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