これまでの街歩き

トンヨン/ 韓国

2012年11月20日(火) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2012年8月

街の「活魚市場」

Photo

 港から街の中心地へ向かっていると、にぎやかな通りを発見。道の両側に所狭しと並べられた容器には、さまざまな種類の魚がピチピチと跳ねています。ここは魚市場。生きたまま魚が売られているところが、港町ならではですね。歩いていると、排水溝をのぞき込んでいる女性たちの会話が聞えてきました。「タコが流れた!どこに行った?」…どうやらタコが脱走したようです。しばらくして無事捕獲された小さなタコは、戻された容器の中で元気に泳ぎ回っています。この魚市場では、海水を水道のように引いているため、魚を生きたまま売ることができるんだそうです。他のお店でも、おもしろい光景を目撃しました。魚の切り身を並べたタオルをロールケーキのようにクルクル丸めて、まな板にグイグイ押し付けている女性がいます。何をしているのか聞いてみると、「これはヒラメ。氷水で洗った後にタオルで水分を取り除くと、身がプリプリになっておいしいの」と教えてくれました。市場で買った魚は隣接する食堂で調理してくれるので、キムチやナムルなどおなじみの料理と一緒に食べることができるのだとか。
 それにしても、ここで出会うのは女性ばかり。どうして女性が多いのか理由を聞いてみると、「男はすぐ疲れるから、市場の仕事ができないのよ」とバッサリ…。男性のお客さんたちも、笑いながら認めていました。男は海へ。女性は陸で。トンヨンの港は男女の役割がはっきりしているようです。

街の「壁画」

Photo

 午前11時、丘の上の住宅街へと続く、急な坂道にさしかかりました。車の往来も多く、路上駐車が坂の上まで続いています。そこで青空が描かれた壁を発見。隣の壁にも絵が描かれていて、前で写真を撮っている人たちがいます。どうやらみなさん、壁画を見に来ているようです。この場所は、“トンピラン壁画村”。2007年に、この一帯を公園にするために家々を取り壊す計画が浮上しました。それに異を唱える人々が中心となり、全国の美大生やアーティストに呼びかけて「全国壁画公募展」を開催したそうです。それが評判を呼び、取り壊しの計画は中止に!以降、壁の絵は何度か塗り替えられ、今では観光名所の一つに数えられるほどになったとか。絵が路地の暮らしを守ったんですね。
 大きな白い翼が描かれている壁は、前に立つと天使になったような記念写真を撮影できるため、順番待ちの長い行列が出来ていました。一方で、今にも落ちてしまいそうなボロボロのつり橋が描かれている地面では、冒険気分を味わえます。こんな楽しい絵が盛りだくさんなんです。
 そんな中、真っ白な壁のお宅を発見。奥様に話を聞いてみると、塗り直しの時期に仕事が忙しくて画家に会うことができず、新しい絵を描いてもらうことができなかったそうです。壁の持ち主ときちんと打ち合わせをしないと、画家はどんな絵を描くか決められないんですね。「(次回は)服とか家とか…、いい作品を描いてほしい。派手な絵が好きなの」と笑う奥様。見ると、服装は花柄です。この柄のように派手な絵が、いつかこの道を彩るんですね。

街の「潮干狩り」

Photo

 街の中心地から海底トンネルをくぐって対岸の海辺までやってきました。湖のように穏やかな海面をのぞくと、透きとおっていて、とてもキレイ。干潟のような場所に人がいるのが見えました。近くに寄ってみると、長靴をはいた女性たちがしゃがんで下を向き、黙々と砂を掘っています。潮干狩りでしょうか?手際のいいご婦人が「アサリをとっているのよ」と教えてくれました。とったアサリは洗って食べたり、冷蔵庫で保存してナムルにしたりするんだとか。でも収穫したアサリは、家族で食べきれるとは思えないほど大量。聞いてみると、「食べたり、売ったり。稼ぐためよ」とのことでした。単調な作業ですがとても重労働なはずなので、「体は痛くなりませんか?」と聞いてみると、「痛くなるけど、いつの間にか良くなるわ」と笑顔で一言。話している間もひと時も手を休めず、アサリが一つ、また一つと、バケツに放り込まれていきます。
 「潮が引いた時と満ちた時の差が激しいので、掘るのに最適なんだ」と教えてくれたのは、貝を運んでいた男性。波がいいので貝もよく育つそうです。「この海は街の宝だよ」と誇らしげでした。自然の恵みに感謝をささげながら、黙々とアサリを掘る女性たち。たくましく生きる海の女たちとの出会いでした。

※NHKサイトを離れます
ページトップ