これまでの街歩き

レッチェ/ イタリア

2013年3月12日(火) 初回放送

語り:工藤夕貴

撮影時期:2013年1月

街の「バルコニー」

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 路地を歩いていると、バルコニーにいる人と下の道にいる人が買い物の相談をしているところに遭遇。バルコニーにいたアンドレッタさんが、家に招待してくれました。立派な邸宅の中では、アンドレッタさんがご自慢のバルコニーで街一番の高さを誇る鐘楼を眺めながら、昔話を聞かせてくれました。
 かつて南イタリアの上流階級では、女性は簡単に外出することができなかったのだとか。女性たちが唯一、外の世界にふれることができた場所が、バルコニーだったのです。お花の手入れをしながら道行く男性と目を合わせたり、時には恋を育んだり、バルコニーはとても大切な場所だったようです。70年前にここに嫁いできたアンドレッタさんは、一族の写真を見せながら、初めてバルコニーに立った日の話をしてくれました。ステキな思い出を胸に、今もバルコニーで過ごす時間を大切にしているんですね。

街の「猫おじさん」

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 午後1時過ぎ、お店のシャッターが次々と下ろされ、街から人々が消えてしまいます。みんな昼食を食べに帰宅し、おまけにお昼寝までしてしまうんです!まるで夏の暑い時期の習慣のようですが、レッチェでは冬でも続くのだとか。人けがなくなると、街の猫たちが次から次へと集まってくるではありませんか。
 そこへ、くわえタバコをした紳士が登場。「ティーナ」「アモーレ」「マンマミーナ」と優しく猫たちの名前を呼び掛け、ごはんを与えています。男性の名前は、アントニオさん。年金のほとんどを猫の餌代につぎ込んでいて、タバコ一箱分のお金しか残らないのだそうです。猫たちの世話は、偶然知り合ったおばあさんの遺志を継いで15年間欠かさず続けているとか。自分の家でも9匹の猫を飼っているそうですから、よほどの猫好きなんですね。
 アントニオさんに誘われ、かつては修道院だったというご自宅へ。庭には“散歩道”と呼ばれるバルコニーがあり、昔は修道女たちが散歩を楽しんでいた場所だったそうですが、今ではアントニオさんと猫たちの憩いの場となっています。

街の「家具の修復屋さん」

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 夕方、工房らしき建物の入り口で、巨大な木馬にまたがっている少年を発見。「この木馬、僕のおじいちゃんが作ったんだ」と得意げです。すると、奥から白いひげをたくわえた貫禄たっぷりのおじいさんが出てきました。お孫さんが乗っている木馬は、若いころに作ったものなんだと教えてくれます。ここは家具の修復をしている工房で、おじいさんは父親から技術を受け継ぎ、弟子を育てながら人生のほとんどをこの工房で過ごしてきたのだと、胸を張っていました。19歳の時にお父さんが亡くなり、厳しい人生を送ってきたのだそうです。30年以上も前に作ったこの木馬は、お父さんから学んだ技術の集大成であり、馬に乗ってみたいと憧れた子ども時代の夢であり、苦しい時代を支えてくれた人生の相棒でもあるといいます。
 別れ際に、おじいさんは自分も木馬にまたがり、「私の歴史や記憶がこの木馬には詰まっているのさ」と笑顔を見せてくれました。

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