これまでの街歩き

インチョン/ 韓国

2015年12月8日(火) 初回放送

語り:中嶋朋子

撮影時期:2015年10月

街の「市場」

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 旧市街には、街で最も古い市場があります。19世紀末に始まり100年以上の歴史を誇る「新浦国際市場」。新鮮な魚や野菜のほか、お総菜、香辛料、衣料、生活用品などを扱うお店が140軒並んでいます。19世紀末、当時高級だった西洋野菜が売られ始め、のちに市場に発展しました。今もときどき、外国の船員さんが制服姿で買い物する姿が見られるのだとか。活気溢れる市場は、インチョンの人たちの台所です。
 市場の広場には銅像があります。中国人の男性が、韓国人の親子と日本人の女性に、野菜を売っている銅像です。キャベツ、ニンジン、ピーマンなどそれまで朝鮮半島にはなかった西洋野菜を、中国人が栽培して売り始め、国中に広まったのだと、そばに店を構えるお餅屋さんが教えてくれました。
 店の前でチヂミを焼いたり、お菓子を作ったり、靴下を編んだり…商品を作りながら売っている店が多く、歩いていて楽しいです。

街の「日本人街」

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 港と丘の間に広がる商店街と住宅地は、19世紀末~20世紀初頭まで日本人居留地だったエリアです。1883年にインチョン港が開かれると、日本からの移住者が増え、領事館や銀行などが並ぶ近代的な街が築かれました。日本の植民地時代に建てられたものも含め、今でも多くの日本建築が残っています。
 現在、日本領事館だった建物はインチョン市中区庁として、旧日本第一銀行は開港博物館として利用されています。近年、今も残る日本建築を保存整備して観光に生かそうという気運が高まっています。若い人たちが日本家屋を改装してカフェや食堂を次々とオープンしています。
 「過去をありのまま認めて、それを街の発展に生かしたい」と改築作業中の建築士さん。倉庫を改装してカフェを経営している青年も「昔の面影を残すことで、さまざまな世代の人が街の記憶を共有できる場にしたい」と語ってくれました。

街の「中華街」

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 中華街はインチョンの人気観光名所の一つ。中国の食、衣装、雑貨などを売る店が300メートル四方に集まっています。開港の翌年に清国の人々の居留地が作られ、貿易産業とする街として発展したのが、現在の中華街です。港の荷役労働を担ったのは山東省出身の人々。仕事の合間に急いで食べられると人気だったジャージャー麺は彼らが韓国にもたらし、今では国民食となっています。太平洋戦争及び朝鮮戦争中は在住華僑が減少、多くの人が台湾やアメリカに流出しましたが、1992年の韓中国交回復以来、観光開発が進みました。
 中華料理店を営む華僑の人たちが、公園で休憩中にそんな歴史を生き抜いた親世代の苦労話を語ってくれました。一方今の高校生は、受験戦争もどこへやら、明るくのびのびと育っているようでした。きっと上の世代の人たちが、頑張ってくれたおかげですね。

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