これまでの街歩き

鹿港/ 台湾

2010年3月18日(木) 初回放送

語り:中村梅雀

撮影時期:2010年1月

世界地図

地図

場所

鹿港は台湾の西海岸のちょうど真ん中あたり。台北からは車で3時間、台中からは1時間ほどの場所にあります。
18世紀、オランダ統治時代に貿易港が開かれたこの街は清代には福建省との「両岸貿易」で発展。港が無くなった今も、華洋折衷の古い街並みが残っています。
また60もの寺が建てられ、「三歩歩くと小廟、五歩歩くと大廟に出会う」といわれるほどです。街中に点在する大小さまざまなお寺のたたずまいから、日常の暮らしに根付いた信仰の深さを読み取ることができます。

Information

城皇廟

鹿港の「城皇廟」には週末になると行列ができます。悩みに対する神様の意見を、巫女(みこ)さんが無料で伝えてくれるためです。また、巫女さんに体の悪い所をたたいてもらうと、病気がよくなるといわれています。ここの巫女さんは洋服店の店員でしたが、ある夜、神様のお告げを受け仕事を辞めて巫女になりました。神様と通じる言葉も、急に話せるようになっていたといいます。
取材で訪れた時は、娘が台北へ出稼ぎに行くことの是非を相談したお母さんが「やめた方がいい」と神様に言われ、「神様が言うのだから、やめておきます」と帰っていきました。人生の大事な決断も、神様の意見を仰ぐことが多いのだそうです。
また、ここには神様が72もまつられていて、それぞれ役割が決まっています。私たちの行動を見て、記録するのが「見録司」。記録を見て死んだ後の地獄行きを決めるのが「罰悪司」の仕事です。こんな神様たちに囲まれているので、子供たちは悪いことをしないように、自然にしつけられています。

カキ料理

鹿港の海辺では、カキの養殖が盛んです。干潮時には、収穫に来る人たちでにぎわいます。鹿港の海には大きな川が3つも注いでいて、淡水と海水がほどよく混じりあっています。川からは上流の山から運ばれた養分やミネラルが流れ出し、海では動物性プランクトンが大量に発生します。だから、鹿港のカキはおいしいのだとか。
養殖は「深づり育成」という方法でおこなわれています。カキに10cmほどの針金をつけてつるし、海の少し深い所で育てるのです。海の表層ならカキは早く育ちますが、春先から夏にかけては他の生物の付着が多くなり、カキの成長に悪影響を与えます。深づり育成なら、付着を避けられますが、水温が低く餌が少ないため成長に時間がかかります。鹿港では時間をかけてカキを育てているのです。
料理法はさまざま。カキそうめん、カキの天ぷら、オムレツ、トウチいためや刺身など、街にはカキを安く食べさせてくれる店が並んでいます。

移動人形劇

鹿港では18世紀に中国福建省から伝わった人形劇「布袋戯(ポテヒ)」が今も人気です。頭部は木ですが、ほかはすべて布で作られた袋状の人形を用いることからそう呼ばれます。
舞台はトラックの荷台。呼ばれるのは、ほとんどが神様の誕生祝いなど、お寺関連の祝いごとです。人形劇は、神様に見せるために演じられます。出演料はお寺が払うので、近所の人は自由に訪れて無料で楽しむことが出来るのです。
舞台裏では、スタッフ2~3人が何体もの人形を操ります。2つの人形を両手で同時に操るのも慣れたもの。手に袋のような人形をかぶせ、指の動きで微妙な気持ちまで表現します。演目は「三国志」や「西遊記」「水滸伝」など誰もがよく知る物語。公演は2時間以上に及びます。音楽やセリフは録音されものを、カセットで流すことが多いですが、料金を多く払えば、生演奏付きになります。鹿港には3つの劇団があり、技を競い合っています。

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