これまでの街歩き

鹿港/ 台湾

2010年3月18日(木) 初回放送

語り:中村梅雀

撮影時期:2010年1月

街の「ちょうちん職人」

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メインストリートの中山路。通りいっぱいに、赤や黄色のちょうちんをつるしたお店が。その前では、白く長いひげの男性が、大きなちょうちんに絵付けをしていました。1988年に民族藝術薪傳獎を受賞した人間国宝級の職人さんです。80歳を過ぎた彼は、5人の息子と一緒に仕事を続けています。戦禍によって両耳の聴力を失ってしまいましたが、静寂の中、懸命にちょうちん作りに向き合ってきました。彼の店の作品は材料にこだわり、芸術性が高いことで知られています。
冠婚葬祭や開店祝い、お寺の飾りとして注文は後を絶ちません。手のひらサイズから、高さ170cmに及ぶ大きなものまで、用途によってさまざま。竹を割って竹ひごを作り、それを編んで骨組みに。絵付けを終えるまで、ちょうちん作りには専門の職人がたくさん関わっています。この街では、路地を歩けば、ちょうちんの全工程の職人さんに会えるのです。
お寺でも店先でも、風に揺れ、彩りを添えているちょうちん。鹿港の街に欠かせないアイテムです。

街の「九曲巷(こう)」

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メインストリートを1本裏に入れば、下町風情の漂う路地が伸びています。「九曲巷」は、この街で一番有名な路地。細い入口を入ると、その先には迷路のように曲がりくねった路地が伸びていました。文字通り「9つの曲がり角」があるのかと思ったら、「9=たくさん」という意味だと、植木に水やりをしていた女性に教えられました。
このような路地は、強い風や砂ぼこりを避けるために作られたのだとか。生活の知恵から生まれたんですね。「九曲巷」には、「十宜樓」と呼ばれる渡り廊下があります。下の道と交差して「十」の字になっているから「十宜樓」。この家の主人は風雅を好む人だったそうで、お客を招き、この渡り廊下で月を眺めながら詩を詠んだり、酒を飲んだりしたそうです。
もう1か所、鹿港で有名な路地は、幅がたった70cm。その名も「摸乳巷」。一人通るだけでもやっとの幅で、もし前方から来た人とすれ違えば、どうしても体が触れてしまうことから名付けられました。
鹿港の街歩きのだいご味は、何といっても路地歩きです。

街の「床屋さん」

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鹿港には、何代も続いている古い店がたくさんあります。今回出会った床屋さんもそのひとつ。木製の窓やドアがレトロな店構え。入って聞いてみると、もう70年以上続いているとのことでした。ちょうど散髪していた70歳のお客さんは、10歳のころからここに通っているのだとか。順番を待っていたお客さんは家族連れ。2人のお子さんが小さい時から、ここに通わせているのだそうです。日々の暮らしはもちろん、上の学校に進んだり、就職、結婚…とお客さんの人生のさまざまな節目を床屋さんは見守ってきたのでしょうね。
初代は日本統治時代に技術試験に合格し、この店を持ったのだとか。店には「昭和」の日付が入った日本語の合格証書が飾られていました。100人中数人しか合格できない試験を突破して店を持てたんだそうです。その初代のあとを継いだ息子さんは、「父もうれしいと思っているはず。これからも続けていくよ」とおっしゃっていました。
笑顔で旅人を迎えてくれる店の人たちの温かさに触れました。

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