これまでの街歩き

バース/ イギリス

2012年2月9日(木) 初回放送

語り:牧瀬里穂

撮影時期:2011年10月

世界地図

地図

場所

 イギリス南西部、エイボン川のほとりに広がるバース。18世紀に造られたジョージアン様式の建物が並ぶ市街地全体が世界遺産に登録されています。ロンドンから特急列車でおよそ1時間、高速バスでおよそ3~4時間です。鉄道のバース・スパ駅は、街の中心に位置しています。中心部は1日で歩いて回れるほどの広さ。イギリス有数の観光都市で、およそ2000年前、古代ローマ時代に造られた温泉遺跡があることで有名です。ローマ人が去ったあと温泉は埋もれてしまいますが、12~17世紀にかけて整備され、再び日の目を見るようになります。温泉の効能が評価されて上流階級の保養地となってからは、街を舞台に華やかな社交が繰り広げられました。今も当時の建物がそのまま残り、街全体が優雅な雰囲気に包まれています。
 さらに、バースは文学祭や演劇祭、音楽祭などが盛んに行われる芸術の街でもあります。ここで上演された演劇がロンドンでも上演されるか否かはバース市民の評価による…そう言われるほどです。また、バースには「7つの丘がある」と言われ、街の中心部を囲む丘陵地帯には住宅街や大学、公園や家庭菜園が広がっています。伝統建築と緑の美しい優雅な街並みは、多くの観光客を魅了しています。

Information

伝統建築

 バースが上流階級の保養地として栄えた18世紀、それにふさわしい街並みを造ろうと都市計画が整備されました。建物の建材には地元で取れるハチミツ色の石灰石が使用され、左右対称の円柱などを多く用いたジョージアン様式の建築が普及しました。そうした建物の並ぶ市街地全体が、世界遺産に登録されています。
 イギリスでは、産業革命(18世紀後半~19世紀前半)によって人口が都市に集中するようになり、限られた土地に多くの人が住める集合住宅「テラスハウス」が普及しました。道路に沿って直線状に建てられたもの、庭や公園を取り囲むようにカーブさせて建てられたものがあります。中でも特に有名なのは、当時、貴族の住まいとなった「ロイヤルクレセント」。“世界で最も美しい集合住宅”と呼ばれ、三日月型に湾曲しているのが特徴です。現在も120世帯が暮らす集合住宅として使われているほか、博物館やホテルとしても使用されています。また、「サーカス」と呼ばれる集合住宅は3つの建物が円形の庭を囲み、完全な円になるように配置されています。ここにも、今なお数十世帯が暮らしています。
 バースはまさに「ハチミツ色に輝く建物が並ぶ、エレガントな街」なのです。

郵便博物館

 郵便制度の原型は、実はバースでできました。1840年、世界で初めて切手が編み出され、封書に貼られて投函されたのです。それ以前は、郵便物を受け取る側が料金を払っていて、利用者は王族や貴族などごく限られた人々だけでした。また、郵便物は馬か徒歩で一度ロンドンに運ばれてから配達されたため、届くのに時間がかかることが難点でした。しかし、切手が編み出されたことで、均一料金で郵便物を送れる全国ネットワークが確立したのです。とても画期的な出来事でした。
 馬車を使っていた18~19世紀、郵便配達は命がけでした。寒さや事故、盗賊による被害など、危険を冒しての旅だったからです。配達人には「遺言を残せ」「普段の2倍厚着しろ」「ブランデー持参のこと」「貴重品は持つな」など多くの注意事項がありました。
 バースの郵便博物館には、世界初の切手「ペニー・ブラック」や、配達員の注意事項を定めた史料のほか、街角にあった昔の郵便ポスト、配達人の到着を知らせるラッパなど、さまざまなものが展示されています。郵便の歴史に触れられるのも、バースでのお楽しみの1つですよ。

名物 サリーラン・バンズ

 バース土産として有名なのは「サリーラン・バンズ」と呼ばれる大きくてふわふわのパン。街でいちばん古い建物に入っている「サリーランズ」というティールームで手に入れることができます。バターや卵が多めに入ったリッチな味わいで、ブリオッシュタイプの丸いパン。ほかの材料にも地元でとれる新鮮なものが使われています。ジャムとクロテッドクリームを添えて、紅茶と一緒に味わうのが定番ですが、ローストビーフやクリームシチューなどと一緒にいただいても美味。
 このパンは、17世紀に宗教迫害を逃れるため、フランスからバースに移り住んだ女性によって作られました。そのレシピは100年間ほど行方不明になっていましたが、1936年、建物の改修で見つかり、今に受け継がれています。作家チャールズ・ディケンズの日記にも登場するという由緒あるサリーラン・バンズ。今もティータイムに、食事時にと地元の人々に愛され、毎日400個が作られています。

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