これまでの街歩き

バース/ イギリス

2012年2月9日(木) 初回放送

語り:牧瀬里穂

撮影時期:2011年10月

街の「温泉遺跡」

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 街の中心にある広場「アビ―・チャーチ・ヤード」には、古代ローマ時代の温泉遺跡「ローマン・バス」があります。建物の中に入ると、プールのような巨大浴槽にお湯がはられていました。源泉の温度は摂氏46度、1日およそ100万リットルが湧き出ています。ここでスケッチ中の8歳の子どもたちは校外学習で訪れ、初めて温泉を見たといいます。温泉を絵にするのは大変そうでしたが、とても楽しそうでした。その隣には「パンプ・ルーム」と呼ばれる18世紀に貴族の社交場だったカフェがあり、温泉水を飲むことができます。43種類の化学物質が含まれているこの温泉水、健康にいいのだとか。そこで飲泉していた紳士は、20年間飲み続けているおかげですこぶる体調がよく、「いつもは100歳って言うけど、本当は153歳」(!)なんだそうです。18世紀、貴族たちはそんなふうにジョークを言いながら社交を繰り広げていたのかもしれません。

街の「額装屋さん」

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 温泉遺跡の北東にあるウォルコット・ストリートには、アンティーク家具の修理屋さん、ガラス工房など職人の営むお店や工房が軒を連ねています。その中の1つ、額装屋さんのショーウィンドーに、額縁に入った靴が飾られているのを発見。思わずお店に立ち寄ってしまいました。そのとき職人さんが取り組んでいたのは、当時2歳の男の子が着ていたというボタンシャツの額装。その子の父親が持ち込んだもので、結婚記念日のプレゼントとして奥さんに贈るのだそうです。なんでも、奥さんは息子さんが2歳の頃、そのシャツを着ていた姿がお気に入りだったのだとか。額装して飾れば、いつでもその姿を思い出せるというわけです。夫婦で子どもの成長を喜びながら、大切な思い出を共有できる、すてきなプレゼントですね。
 お店には、さまざまな思い出の品を額装する注文が毎日のように入るそうです。お客さんを幸せにするこの仕事に、職人さんも大いにやりがいを感じているとのことでした。

街の「水上生活者たち」

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 街の北東部には、産業革命の時代にさまざまな物資の運搬を目的に造られた運河が流れています。緑の多い静かな水辺を散歩できる遊歩道沿いに、たくさんの船がつなぎとめられていました。船は「ナローボート」と呼ばれ、キッチンやベッド、シャワーと冷暖房設備がついているのだそう。船の中で台所仕事をしていた女性は、街なかでドレスをデザインする仕事をしながら、ボーイフレンドと一緒に住んでいるとのこと。その日は彼のお父さんの退職記念の食事会の準備をしているところでした。
 イギリスの運河で多く見かけるナローボート。安く購入した船を自分で改修して住みかとする人、定年後の暮らしを楽しむため、レジャー用として手に入れる老夫婦など、持ち主の事情はさまざまです。遊歩道を進み、ほかの水上生活者にも出会いました。海軍を退役して愛犬と新生活を始めたばかりという青年は、軍隊での体験から心の傷を抱えているようでしたが、自然豊かな環境で再生を図ろうとしていました。がんの摘出手術を受けて退院したばかりという年配の女性は、その隣で同じく船暮らしをする母娘と歓談。船暮らしの良さは「お互いを支え合う濃密なコミュニティー」だと語ってくれました。

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